2008 Fiscal Year Annual Research Report
中部山岳地域における水循環および物質循環過程の研究
Project/Area Number |
17310007
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 啓助 Shinshu University, 理学部, 教授 (60145662)
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Keywords | 中部山岳地域 / 降雪 / 積雪 / 大気沈着量 / 蒸発散量 / 渓流水 / 融雪 / 水収支 |
Research Abstract |
調査対象流域では、梅雨から秋にかけて降水頻度が高く、これに対応して一時的に流出量も増加するが、基底流量が最も大きくなるのは融雪期である。融雪流出が始まるまでの冬期間には、渓流水のpHと電気伝導度は徐々に増加するが、融雪流出の開始とともに両者は急激に低下する。梅雨や台風による流量増加時にも渓流水のpHと電気伝導度は一時的に低下する。融雪初期には渓流水中のCl^-濃度が増加する。また、渓流水中のNO_3^-濃度は降雨による流量増加時に増加する。このふたつ以外の渓流水中の主要イオン濃度は、電気伝導度の変動とほぼ同期している。 流域単位の水収支を検討することにより、降水量データの不十分な山岳流域においても、降雪量を評価することがある程度可能となるので、北アルプス乗鞍岳東側斜面の河川源流域で水収支に関する研究を実施した。研究対象流域の水収支を考える際に標高の低い地点のみの降水量を用いると、流出高超過になる。そこで、暖候期についてはアメダス観測による降水量の高度補正を行い、寒候期については流域内における積雪水量観測結果による降水量補正を行うと、蒸発散量も考慮に入れた収支式でバランスするようになることを明らかにした。 さらに、研究対象流域における物質収支についても研究を行った。陽イオンの物質収支では、新しい火山体を基盤とする岩石土壌からの溶出が極めて多いことを反映し、流域への大気沈着量に比べて渓流水としての流去量が圧倒的に多くなることが明らかとなった。一方、岩石土壌からの溶出などを考慮する必要のないCl^-イオンについては、大気沈着量と渓流水としての流去量がオーダー的にバランスし、また、NO_3^-イオンについては、流域内での消費や内部循環によって、流域への大気沈着量が渓流水としての流去量よりも大きくなっていることを示すことができた。
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