Research Abstract |
露には亜硝酸イオンやアンモニウムイオンが多く含まれている。露が生成すると,大気中にある亜硝酸ガスやアンモニアガスが露に取り込まれ,これらの気体の大気中の濃度が下がる。亜硝酸は早朝のOHラジカルの主発生源として知られており,したっがて,亜硝酸濃度が下がることは大気光化学活性が落ちること,つまりオゾン濃度が下がることになる。我々は,本研究により大気中の亜硝酸ガスが露の生成により下がること,露中に高濃度で存在すること,乾燥により,その多くがアンモニアと反応して窒素になることを見出した。また,早朝の亜硝酸濃度の減少が,オゾン濃度の減少に関与することを,実際の測定データより示し,また,計算機シミュレーションによってもその減少が起こることを確認した。 亜硝酸アンモニムは,迅速に乾燥させ高濃度にすると窒素になる反応が支配的になり,ほとんどの亜亜硝酸が窒素となることがわかった。一方,低濃度の試料をゆっくり乾燥させると,亜硝酸ガスとして気体となることがわかった。実際の露は小さいため,日出後迅速に乾燥するため,その多くが窒素となる。その結果,露が生成・消滅すると,大気中の亜硝酸が吸収・分解されることになり,早朝のOHラジカル源である亜硝酸が減少する。その結果,午前中のオゾン濃度が低くなると予想される。 実際,過去に露が出た時のオゾン濃度を調べたところ,露が出ていない日よりもオゾンの生成が抑えられていることがわかった。露が生成する日は,雲もなく,風も弱いため,オゾン濃度が増加しやすい気象条件であるにもかかわらず,オゾン濃度が抑制されたことは,亜硝酸の減少によるものである可能性が非常に高い。また,亜硝酸野濃度以外の条件を同じにしてシミュレーションを行ったところ,午前中のオゾン濃度が10%程度抑えられる結果となった。本研究により,露の生成がオゾン濃度を抑える働きがある可能性が高いことが明らかとなった。
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