Research Abstract |
本研究では,水蒸気プラズマを大気圧下の直流放電によって発生することに注目し,水蒸気プラズマによって,オゾン層破壊物質あるいは地球温暖化物質であるフロン,ハロン,SF_6等のハロゲンを含む廃棄物に対する新しい処理方法を開発することを目的とした。 本年度は,水蒸気プラズマ中の有機物の分解挙動の解明を主に行った。昨年度に改良を行って長時間の水蒸気プラズマを発生することが可能となったトーチを利用してエタノールの分解を行い,質量分析器,ガスクロマトグラフィ,分光計測を行った。水蒸気プラズマのパワーとエタノール供給量を変化させ,そのときのCO,CO_2生成量,プラズマ温度を計測した。その結果,エタノール供給量が多くなるとプラズマの温度がやや低下するが,それでも水蒸気プラズマの温度はトーチ出口で平均で4700Kであり,中心温度は9400Kであることから,フロンの水プラズマ中での滞留時間を考慮するとこの位置でほぼ分解反応が終了することを明らかにした。 次に水蒸気プラズマの数値解析を行った。熱プラズマの温度,速度,濃度分布は,基礎方程式である流体力学の保存式を解くことによって求めることができる。質量,運動量,エネルギー,成分の各保存式,および電磁場の方程式を連立させて解いた。数値解析の手法はSIMPLER法を利用した。プ熱プラズマの数値解析では,その物性値である熱力学的性質と輸送係数を正確に求める必要がある。本研究では,Chapman-Enskog法により輸送係数を温度と濃度の関数として,繰り返し計算を行うたびに計算し,正確な物性値を用いた。プラズマ中の水素,あるいは酸素の解離・電離反応速度を考慮したモデリングを行い,従来は熱平衡が成立すると考えられていた熱プラズマでも,トーチ壁近傍は水蒸気導入近傍ではプラズマの組成が熱平衡から大きくずれることを明らかにした。
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