Research Abstract |
本計画において開発中のシミュレーターは,三角分割で近似可能な物体,球,冠球円柱,冠球円盤の組み合わせで形状が形成される剛体微粒子に対応するものである.シミュレーターの開発は,平衡状態における静的な構造を焦点としたモンテカルロシミュレーションと,微粒子の衝突によって駆動される分子動力学に対応する予定である.平成17年度で,モンテカルロシミュレーションに対応する部分の大枠が完成し,デバッグと公開のための準備段階に入ることができた.公開のためのマニュアル作りに着手した. シミュレーターの機能試験を兼ねて,シミュレーターを2つの課題に適用した.一つは「キラル液晶分子が形成する螺旋構造の分子的起源について」である.また,もう一つは,「剛直な単量体が会合して二量体になる際の密度変化について」である.「キラル液晶分子が形成する螺旋構造の分子的起源について」は,キラルな液晶分子の斥力相互作用が,液晶の螺旋構造に与える影響を調べるためのものである.シミュレーターを用いて,冠球円柱と三角形の組み合わせでネジ状の剛体分子をモデリングし,この分子からなる系の構造を調べた.結果自身は,最精査すべき点も含んでいるが,右ネジと左ネジでは,コレステリック液晶における,配向ベクトルの捩れの向きが逆になるということを示唆する結果を得た. 本計画は,熟練したプログラミングのノウハウと,専門知識を必要としなくても,容易に材料開発で利用することが可能なシミュレーターの開発を目指している.シミュレーターから得られる結果をものづくりに反映させる目的で,微粒子分散系の実験的研究も視野に入っている.平成17年度は,有機クレイを強誘電性高分子PVDF中に分散させることが,PVDFの結晶化に影響を与えること,および,そうして得られた試料が,未延伸でも強誘電性に特有なD-Eヒステリシスを示すことが分かった.
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