Research Abstract |
本研究課題では,Siを始めとする半導体基板あるいはAl,Tiなどの金属基板上に形成した微粒子の自己集積膜をテンプレートとし,水溶液中でのアノード酸化プロセスを適用することで局所的な電気化学反応を制御しつつ基板上に三次元多孔質酸化膜を作製し,種々の反応空間場や触媒担体材料としての応用を検討した。また,化学エッチング,めっきなどの湿式プロセスを組み合わせた二次加工により,さらに複雑な高次構造を持つマイクロ・ナノ構造体の構築に関しても検討を行い,各種デバイス応用を目指した。その一例として,平成19年度は前年度に引き続きA1の(100)面に成長するトンネル状のエッチピットの発生位置制御法の確立に努めた。 Alの(100)面に形成されるエッチピットは,通常ランダムに発生するため従来の方法では拡面効率に限界がある。微粒子集合体をテンプレートとしてアノード酸化により作製したハニカム状酸化物をエッチング時のマスクとして用いれば,エッチピットは露出した金属部に選択的に誘導され,ピットの配列は規則的な最密充填構造を形成することが予測された。前年度までの研究において,局所的にピットの誘導が可能であることが見出されており,本年度はエッチング時の浴温度,電流密度,エッチング時間などエッチング条件の見直し,最適化を中心に検討を重ねた。その結果,マスクを用いないバルク体へのエッチング条件に比べ,浴温度を低温にし,電流密度を低下させることで,露出したAl表面のみに優先的にピットを誘導できることを明らかにした。 人工的なピット発生位置制御法はプロセスの複雑化を招き,研究室使用レベルを超えた汎用性に乏しいのが現状であるが,本プロセスは物質固有の自己組織化能を最大限に利用し加工プロセスの簡略化を達成した。さらに本手法は加工プロセスの大面積化,低価格化をも実現する汎用性を兼ね備えた製造プロセスとして極めて有望であり,A1電解コンデンサの高容量化を実現する新たなアプローチとして本研究成果の意義は大きい。
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