Research Abstract |
神経保護作用を示すシクロペンテノン型プロスタグランジン類縁体であるNEPP11の構造を基に,5員環部のトポロジーに着目した分子設計を行い,三成分連結PG合成法により種々の新規化合物を合成した。PC12細胞におけるマンガンイオン誘発アポトーシスに対する各化合物の効果を検証した結果,NEPP11より強いアポトーシス抑制作用を示し,毒性も低い化合物を見いだした。さらに,種々の構造修飾体による構造活性相関研究の結果,(1)5員環部のトポロジーは抗アポトーシス作用には影響しないが,J型の方が毒性が低下すること,(2)抗アポトーシス作用発現には交差共役ジエノン構造が必須構造であること,(3)ω側鎖には適度な疎水性の炭素鎖が必要であり,ω鎖を除くと活性が消失すること,などの知見を得た。続いて,シクロペンテノン化合物の神経保護作用発現においては,共役付加反応を受けやすいエノン構造と標的タンパク質のシステイン残基との共有結合形成が重要な役割を果たしていると考えられることから,5員環エノン部を修飾し,化学反応性と活性との相関を検証した。具体的には,5員環エノン部のカルボニルα位にフェニル基,メチル基,ベンジル基,フェニルスルファニル基,メチルスルファニル基,フェノキシ基,フェニルアミノ基を導入した新規類縁体を設計した。炭素置換体は,シクロペンテノン化合物から調整したαヨード体とのカップリング反応により,またヘテロ置換体は対応するエポキシドの求核置換-脱離反応により合成した。合成した化合物の抗アポトーシス活性を評価した結果,スルファニル置換体のみが活性を示すことがわかった。一方,細胞内シグナル解析を行ったところ,スルファニル置換体はNEPP11の場合と異なり,JNK経路は阻害せず,下流にあるカスパーゼの活性化を阻害していることがわかった。現在,さらに詳細なシグナル経路の解析を進めると共に,ビオチン基を導入した親和性標識プローブの合成を試みている。
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