2008 Fiscal Year Annual Research Report
東北アジアにおけるユートピア思想の展開と地域の在り方についての総合的研究
Project/Area Number |
17310139
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 勝芳 Tohoku University, 東北アジア研究センター, 名誉教授 (20002553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平川 新 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90142900)
岡 洋樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00223991)
寺山 恭輔 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (00284563)
高倉 浩樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (00305400)
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Keywords | ユートピア思想 / 東北アジア / 地域の在り方 |
Research Abstract |
東北アジアにおけるユートピア的理念が各地域の過去及び現在の在り方にどのような影響を与えているかという問題関心が、この地域の地域研究にとって極めて有効な方法たりうることと、この研究の現在的な大きな意義を確認できた。レーニンはトマス・モアやフーリエなどをソ連の前に位置するユートピアンとして認めていたことを見た上で、共産主義ユートピアの内実を検討した。ソ連では検閲もなく、災害も事故もなく、人々は健康で、豚さえも病気にならないという「ユートピア」を国内外に示そうとしていた。それを支えたのは集権的党中央と末端「細胞」で運営される強固な組織を有するボルシェビィキ的共産党であったが、そこでは、厳しい国民監視体制と言論の統制、流刑や死刑などの懲罰があり、密告も多かった。プロレタリア独裁=「労働専制」政権理念がモンゴル・中国などに影響を与え、共産党政権が樹立された。この共産主義ユートピアが東北アジアの根本問題の一つであり、過去・現在の地域の在り方を大きく規制している。中国においても監視体制と懲罰体制はソ連と同じであり、現在も厳しくかつ巧妙になされているが、中国古代以来の民が相互監視し、密告するように作り上げられたオートマチック・システムが、共産党支配の伝統に取り入れられたこともわかった。また、日本においては欧米に対抗する日本主義、アジア主義というユートピアが主張されたが、アジア主義者工藤忠による1942年5月の中国問題「建白書」や、幕末秋田藩の理想的村落の存在、及びモンゴル革命における地域社会と共産党細胞問題など、従来未見の史料発掘を伴う、多くの貴重な成果をあげることができた。
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