2008 Fiscal Year Annual Research Report
古代ナム語の新研究:字音検索ツールとチベットビルマ語データベースによる解析の試み
Project/Area Number |
17320063
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 巧 Kyoto University, 人文科学研究所, 准教授 (90259250)
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Keywords | 敦煌チベット文献 / チベットビルマ諸語 / ナム語 / 蔵漢対音資料 / 羌語支 |
Research Abstract |
敦煌チベット写本に含まれる未知の言語であるNam語を記録した資料は、Thomasの研究した大英図書館所蔵本のほかに、フランス国立図書館所蔵のペリオ収集文献中にも写本の断片が存在する。どの資料の紙背にも漢文テキストが書かれており、いずれも鳩摩羅什訳「妙法蓮華経巻第四 五百弟子受記品第八」の一部であることが判明した。大正大蔵経の校訂テキストと比較対照したところ、フランス国立図書館所蔵のP.t.1246はP.t.1241の上部からちぎれた1断片であること、またP.t.1241+1246は大英図書館所蔵のNam語文献IOL Tib J 736に先行する部分であり、間に漢文テキストで8行相当の欠落があることがわかった。これらのNam語資料は本来1巻の写本が断裂したものであることを実証し、テキストの前後関係も明らかになった。つぎにNam語テキストをローマ字に転写してコンピュータに入力し、検索が可能な電子テキストを作成した。テキスト中に見られる語形がチベット=ビルマ語といかなる関連を持つかについては、まずチベット=ビルマ語の側においてほぼ共通して伝承されている語形と、ある言語グループにのみ見られる特徴的な語形とを整理しておく必要がある。羌語支を特徴づける語彙として「腎臓、膿、尿、年、研ぐ、忘れる」の6語に加え「昨/今/明」(年)のセットがあることを検証し、それが文献に残る歴史上のチベット=ビルマ語の西夏語にも共通することから、西夏語が羌語支に連なる言語であったことを実証的に明らかにすることができた。Nam語テキスト中にこれらの語彙と対応する語形があるかどうかは、引き続き検証を進めているが同定は容易ではない。このほかテキスト中に「家」を示すと思われる語形が見えることに注目し、チベット=ビルマ語の伝承形と対応する確実性が高いことを論証した。
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Research Products
(3 results)