2005 Fiscal Year Annual Research Report
機能的脳イメージングによる言語処理機構の解明:文法と単語を中心として
Project/Area Number |
17320089
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
窪田 三喜夫 成城大学, 文芸学部, 教授 (60259182)
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Keywords | 近赤外分光法 / 言語脳科学 / 言語処理 / 発話 |
Research Abstract |
研究目的 本研究では、機能的脳イメージング装置の1つである近赤外分光法を用いて、言語を産出した場合に、どのような時間的タイミングで発話が開始されるのか、言語発話に関連して活動する脳部位はどこか、聴覚フィードバックと自然フィードバックの手法によって、発話処理の阻害度が異なるのかを、実証的研究により明らかにする。 研究テーマ (1)200ミリ秒という時間的な遅延フィードバックと自然フィードバックの違いにより、発話がどのような言語上の影響をうけるのか、 (2)聴覚的遅延フィードバックによる効果は、言語行動と脳内処理の両面で見られる現象であるのか。 具体的な研究内容 各被験者はマイクに向かって、パソコン上に表示される文章を産出した。録音した音声データを音声ソフトにより分析し、どのような長さで文章を産出しているのかを計測した。近赤外分光法による脳内酸化ヘモグロビン(OxyHb)と脱酸化ヘモグロビン(deOxyHb)の濃度変化を測定した。OxyHbは酸素供給を、dcOxyHbは酸素消費を示す。40ミリ秒をサンプリング時間とした。主な研究テーマは、次の通りであった。 (1)200ミリ秒の時間遅延の際に、2種類の母音長(短母音・長母音)を含む文章のどちらで、聴覚的遅延フィードバックによる影響が現れるか、 (2)2種類のアクセント(平板、下降)のどちらで、聴覚的遅延フィードバックによる影響が現れるか、 (3)該当する単語レベルと文章レベルの両方において、聴覚的遅延フィードバックによる影響が現れるか。 主な実験結果 (1)単語レベルではなく、文レベルで、聴覚的遅延フィードバック効果が見られ、自然フィードバックと比較して、文章の発話時間がのびた。該当する単語では、即座のフィードバック効果は見られなかった。 (2)200ミリ秒の音響的遅延フィードバックの場合、長母音の方が短母音と比べ、酸素が多く消費された(deOxyHb)。そのピークは、発話開始時点から160ミリ秒であった。 (3)母音を伸長する際に、酸素供給(OxyHb)が多くなされることが判明した。そのピークは、母音伸長開始時点から100ミリ秒であった。 (4)左半球ブローカ領域とその右半球相当部位で、発話成分が検出された。これは、自然フィードバックでも生じた。deOxyHb成分において、特にBA44において発話開始時点になって酸素消費量が増加することが確認された。 (5)平板アクセントと下降アクセントによる音響的遅延フィードバックと自然フィードバックでは、下降調の方が平板調と比べ、酸素供給と酸素供給の両方が増した。 本研究の意義 本研究では、40ミリ秒という高い時間分解能によって、言語発話の処理課程が近赤外分光法により判明した。両半球ブローカ相当部位で、早期のタイミングで発話成分の存在が明らかになり、音素やアクセント型の違いによって、酸素交換の仕方が異なることが示された。
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Research Products
(1 results)