2008 Fiscal Year Annual Research Report
近世巨大都市大坂の形成と変容に関する基盤的研究-法と現実、中心と周縁の視点から-
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17320102
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
塚田 孝 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 教授 (60126125)
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Keywords | 巨大都市 / 大坂 / 都市法制 / 社会構造 / 周縁 / 町触 |
Research Abstract |
今年度は、近世大坂における町触や大阪府布令などの都法令の基礎的な検討を行うとともに、4年の研究期間を集約する研究会・シンポジウムを実施し、都市社会を総体的に把握する方法としての【法と社会】の視点(「法の内容」と「法の形式」を相対的に区別しながら両方向から都市社会の実態を把握する)の共有化をはかった。 1.17世紀町触の研究会を計5回開催した。京都大学所蔵杉山家文書「大坂御仕置書出之写」を素材に、『大阪市史』所収の町触との比較・検討・校訂し、町触史料の集成作業を行い、また、幕令や江戸町触、京都町触と比較し、「法の内容」と「法の形式」から都市社会の実態を検討した。 2.新たに、慶応末〜明治初年の布令を対象とする研究会を立ち上げ、計五回開催した。大阪市立中央図書館小林家文書「御布令」を素材に、『大阪府布令集』や関連史料との比較検討を進めている。これまでの検討によって『大阪府布令集』の編集には問題があり、布令史料の良質なテキスト整備が必要なことが明らかになった。 3.以下の史料調査および収集を行った。 (1)大阪市立歴史博物館所蔵の「大坂三郷町絵図」の調査および写真撮影・データ化 (2)神戸市立博物館所蔵「悲田院長吏文書」の写真収集・データ化 (3)九州大学法制史史料室所蔵大坂関係古文書のマイクロフィルム紙焼きによる収集 4.都市社会史に関する公開の研究会である近世大坂研究会を計3回開催した。江戸・京都・大坂の巨大都市を対象とする研究・書評会を行い、また四年間にわたる活動の総括を行った。 5.9月6〜7日に、シンポジウム「身分的周縁の比較類型論-近世都市の法と社会-」(於大阪市立大学学術総合情報センター)を開催した。このシンポジウムは、「近世大坂の法と社会」に即した問題提起と、「モノの流通と諸社会集団」に関する報告2本、「乞食・勧進層の形成する社会集団」に関する報告4本で構成され、【法と社会】の視点からの分析は特に都市の周縁社会に対して有効であること、また諸都市との比較類型論が必要なことが確認された。この成果は2009年度の出版予定である。 5.今後の近世都市の身分的周縁に関する国際的な比較類型論への研究展開にむけた布石として、ノースカロライナ大学チャペルヒル校歴史学部、プリンストン大学東洋学部と共同してシンポジウム・ラウンドテーブルを実施した。
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Research Products
(14 results)