2006 Fiscal Year Annual Research Report
高齢社会の法理論-高齢社会における法現象に対する法理論的省察の可能性-
Project/Area Number |
17330008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高田 篤 大阪大学, 法学研究科, 教授 (70243540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 武則 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (60033742)
高橋 明男 大阪大学, 法学研究科, 教授 (60206787)
高井 裕之 京都産業大学, 法務研究科, 教授 (80216605)
服部 高宏 京都大学, 法学研究科, 教授 (00218504)
中山 竜一 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00257958)
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Keywords | 高齢社会 / 法理論 / 憲法理論 / 福祉国家 / 社会保障 / 自己決定 / 個人の尊重 / 思い遣り |
Research Abstract |
18年度においては、17年度に獲得された個別的視点をもとに、まず、1「総合」を通じた「高齢社会の公法理論」の形成が目指された。高齢社会における「権利論」については、特に、パターナリズムの弊害と自己決定論の限界を明らかにしつつ、福祉現場のケアに定位しようとする「思い遣りの倫理」の構想に示唆を受け、人権体系における人間の尊厳・個人の尊重、自己決定権、平等原則、社会権などの意義・働きを再検討し、その相互関連性を分析した。高齢社会における法形成・法執行については、議会法律の意義や行政の自律性をめぐる近年の諸議論が、それぞれどの文脈でなされてきたものであるかを明らかにしつつ、高齢社会の諸問題における法治行政論の意義を総合的に再検討した。また、2「高齢社会の公法理論」の検証については、研究成果が実務的な法現象を省察し得るものになっているかをチェックすべく、実務家、具体的には、「おおさか市町村職員研修研究センター(マッセOsaka)」の職員や、家庭裁判所で成年後見制度を扱っている裁判官などとの懇談を重ねた。地方公共団体や裁判所においても、近年、高齢者の自己決定に定位した制度改正・運用が重ねられてきたが、場合によってはそれが逆機能を生じ、実務現場が苦悩している状況を具体的に見聞し、われわれの理論的検討が、予想をはるかに超えてアクチュアルな意義を持っていることを確認できた。3「高齢社会の公法理論」適用範囲の「拡大」の追究では、民法学者との協議を研究会という方式で恒常化した(特に大中教授(法政大)、松川教授、床谷教授(以上阪大))。そこでは、平等な法主体の自己利益追求を前提とする民事法モデルが、高齢社会の諸問題に際し、どのような意義を有し続け、いかなる限界を示しているかについて議論を重ねるとともに、「高齢社会の公法理論」の民事法理論への応用可能性について検討を加えた。
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Research Products
(11 results)