Research Abstract |
研究初年度である本年度は,研究計画に従い,研究分担に則り個別の研究を進めたほか,4回の研究会を開催し,主としてイギリスおよびEUを中心とする海外の消費者信用法の改正動向について調査し,実態に関する資料を収集した。 イギリスでは,2004年に,契約締結前の開示,広告,早期弁済の問題につき,消費者信用規則および消費者信用命令を改正し,透明な消費者信用市場に向けた法整備を行った。さらに,2005年には,消費者信用法改正案を議会に上程し,不当な信用供与に関する規律,免許,法規制の対象となる「不公正な契約」の範囲の拡大,および消費者の救済について,公正なフレームワークを創設し,多重債務を防止しようとしている。EUレベルにおいても,欧州議会と欧州委員会との間の異例ともいえるやりとりを経て,2005年10月7日にEU消費者信用指令の修正提案が公表された。なぜ,欧州議会が2002年11月の当初の修正案を否決したのか,EUレベルにおける消費者信用市場統合のための規律の必要性と各国の消費者信用法制に関する立法裁量との関係,ヨーロッパ中央データ・バンク構想,業者の適正与信義務,など,重要な対立点についての議論を概観し,整理した。昨年秋には,来日中のマックス・プランク研究所のBaum教授およびEU金融法委員会のLoeber氏に対し,EUおよびドイツの消費者信用法制の現状と方向性について,インタビューを行った。 これらの海外に関する調査と並行し,消費者信用に関する私法的・監督法的・市場法的規律のあり方を検討するに際しては,物品・サービスの購入を伴わない消費者金融取引一般さらには金融サービス取引全般の中で消費者信用法を統合的に位置付ける必要があるとの観点から,日本法について総合的な検討を行うとともに,法以外の規律づけの可能性について,ソフトローおよび「企業の社会的責任」についての基礎理論の構築に努めた。
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