Research Abstract |
本研究は東アジアの7力国,地域(中国,台湾,韓国,タイ,マレーシア,シンガポール,インドネシア)における国家の社会保障制度の仕組みと企業内福祉の実態を比較することを目的とする。社会保障制度は,年金制度,健康保険,労災補償,失業保険の有無や本人負担率に注目し,「企業内福祉」については,(1)有給休暇の種類と日数(2)社宅,食事手当,会社独自の健康保険,子弟の学資補助,社員旅行,冠婚葬祭への補助,退職金制度などの福利厚生の提供の有無,(3)労働総費用に占める法定福利と法定外福利の比率,(4)企業内福祉に対する経営側の方針と見解の4つを対象とした。 平成18年度に企業アンケート調査を実施し,約800社について回答を得た。平成19年度は回収した企業アンケートの集計と横比較のためのデータベースを作成し,毎月国,地域ごとの検討会を開催した。そして,平成20年2月に,372ページの最終報告書『東アジアの社会保障制度と企業内福祉:7力国,地域の国際比較』をとりまとめた。 今回め調査から得られた知見は以下のとおりである。(1)有給休暇については,各国,地域とも労働法が定める有給休暇の枠内で提供しているが,中国の帰郷休暇など国に固有の休暇については日数に企業差が見られること。(2)企業が提供する福利厚生については,全体的にモノ志向ではなく金銭志向(補助金の支出)が強いこと,韓国の場合には,子弟の学資補助が際立って高かったこと。(3)法定福利の現金支給に対する比率は,中国,シンガポール,韓国,台湾と続き,タイ,インドネシアが低かった。他方,法定外福利の比率は韓国,台湾が高く,シンガポール,中国が低かった。(4)企業内福祉への方針は,いずれの国,地域でも9割以上が重視する意見を示したが,賃金,ボーナスをより重視すべきという質問には国,地域でばらつきが見られた。以上である。
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