2007 Fiscal Year Annual Research Report
社会経済体制が及ぼす企業家のリスク認識への影響:日本のハイテク産業のケース
Project/Area Number |
17330068
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡田 仁孝 Sophia University, 国際教養学部, 教授 (50158812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DAVID T.Methe 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (50294244)
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Keywords | リスク認識 / 起業家 / 社内起業家 / 社会経済体制 / 制度的仕組み / ナノ / バイオ / 半導体 |
Research Abstract |
平成18年10月に1,521社に質問票を郵送したが、回収率は3.55%(55社)と非常に低かった。このような調査の多さに対する苦情を聞き、回答率を上げることは不可能と判断。調査方法と予定を変え、聞き取り調査からデータを作成した。平成19年11月までに岡田(ナノ45社とバイオ63社)の108社とMetheの半導体20社からデータを取得した。サンプル数は統計分析には十分大きいが、サンプリングがセンサスからパーポシブ・サンプルに変わり、解釈を注意深く行わなければならなくなった。岡田は統計とケーススタディーを使い、Metheはケーススタディを使い分析することとなった。また、平成20年度秋のサバティカルに岡田は、ドイツのマックスプランク研究所(ケルン)でナノとバイオ企業の日独比較研究をすることになった。聞き取り調査での理解を基に、リスクと制度との関係をより深く考察するために、Wisconsin大学Madison校に客員研究員として滞在し、この領域で国際的に有名な教授と研究に関する討論をする機会を得た。この間、アルバイト学生を使い、調査のデータ化等を行った。聞き取り調査から、ベンチャーキャピタルの弱体化と不信から、起業家は資本市場を敬遠するが、その代わり(1)安定的ビジネス、(2)他社との補完的関係、(3)以前関係していた企業との協力関係を構築し、そして、(4)政府技術支援機関や助成等が大きく技術研究と生存を手助けしていることが解った。むしろ、(1)(2)(3)を構築できた企業は、技術開発が進めば、流通や市場への浸透がし易く、生存率も高い。そうでない企業は、学会が市場そのものになっている以外は、市場への浸透や協力関係で苦戦をしいられている。現在、この聞き取り調査における結果を検証するため、データを統計的に分析している。もし、このような理解を検証できれば、米国やドイツにおいて資本市場が弱体化してきている現在、日本的なテクノ・ガバナンスが強みを発揮することができることを意味しているのかもしれない。
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