2005 Fiscal Year Annual Research Report
「原初的共感」の社会・生態学的基盤とその心的アーキテクチャに関する検討
Project/Area Number |
17330133
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀田 達也 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20214554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
結城 雅樹 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50301859)
ウェア ポール 北海道大学, 大学院・文学研究科, 学術研究員 (40396271)
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Keywords | 共感 / 進化 / 生態学 / 表情模倣 / 進化ゲーム / モデル / 実験 |
Research Abstract |
「人間の共感能力とは何か」という問いは、人文・社会科学の共通の根本問題であると同時に、進化生物学などの自然科学領域にもまたがる巨大な問いであり、社会的存在としての人間を理解する上で極めて重要である。本研究では、「原初的共感」という人間の基礎的な感情作用に着目することで、「高次の共感」、「感情の本質的社会性」といったより大きな問題群を考究可能にするための、概念的な整備を体系的に行う。 今年度は、上記の目的に向けて、主に「表情模倣」と呼ばれる現象に焦点を当てた。「表情模倣」とは他者の表情表出と同様の表情が、受け手に再現される現象を指し、「共感」の原初的な基盤を形成する可能性が高い。この現象は乳児期に発現するとされるが、成人を用いた検討、とくにEkmanの定義する基礎表情との関わりから組織的な検討を行った研究は存在しない。今年度は、他者のさまざまな感情表出をコンピュータモニタ上に表情刺激として提示し、それを見ている間の被験者の顔筋の動きを、Facial EMGにより測定する一連の実験を行った。この結果、恐怖や驚き、悲しみなどのいくつかの基礎感情において、被験者の顔筋の動きが、表情刺激と同期化するパタンを示した。これらの研究に基づく論文(田村・亀田,2006)は、現在、「心理学研究」において査読中である。 さらに、今年度は、とくに恐怖・警戒行動の転移現象に関する進化ゲームモデルの構築、及び、その検証実験を行った。被験者はLANでつながれたコンピュータ相互作用実験に参加し、「危険のもとでの生産行動」という文脈において、潜在的な危険に対する被験者の警戒レベルが個人間で同期化するか否かを検討した。結果は、進化ゲームモデルの予測どおり、中程度の危険水準においては、被験者の行動パタンには「生産者-たかり」型の混合均衡が生じるものの、危険水準が高度になると、混合均衡は生じず、代わってパニック型の強い同期化現象が生まれることを示した。これらの研究は、Kameda & Tamura (in press)として、Journal of Experimental Social Psychologyに採択された。
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Research Products
(5 results)