Research Abstract |
研究代表者の根上が1986年に「有限な平面的被覆を持つ連結グラフは射影平面に埋め込み可能であろう」という予想を提唱して以来,その予想は未解決のまま国内外の研究者によって研究が続けられ,「平面被覆予想」と呼ばれるようになった。これまでの研究によって,K_<1,2,2,2>という非射影平面的グラフが有限な平面的被覆を持たないことがわかれば,平面被覆予想は肯定的に解決されることが知られている。実は,前年度までの「平面被覆予想の解決に向けた組織的研究」における研究打ち合わせによって,米国の研究者であるH.H.Glover氏がK_<1,2,2,2>の有限平面被覆の非存在を示すことに成功したという情報を得ていた。しかし,その信憑性に対しては,疑いの声が多い。そこで,米国で行われたある研究集会に参加し,Glover氏と直接会って,どのように問題を解決したのかを伺った。その方法はK_<1,2,2,2>が含むK_<3,3>の細分の平面的被覆を生成し,それを拡張してK_<1,2,2,2>の平面的被覆が構成可能かどうかを議論するというものだった。同氏の話によると,K_<3,3>の平面的被覆は6重まで考えれば十分であるとされている。しかし,その議論は膨大なもので,その会見のみで全貌を知ることは不可能だった。つまり,Glover氏の証明の正当性は確認できなかったが,「平面被覆予想の有限化」を達成するためのヒントは得られた。それをもとにGlover氏の隠された議論の再現を試みて,本研究グループ内でも独自に証明を与えるという研究の方向性が得られた。また,その研究集会において,グラフのdistinguishabilityという概念を知り,位相幾何学的グラフ理論の観点で切り込むことでその研究にも貢献できることがわかり,その後,米国の研究者T.Tucker氏との協同研究に発展した。その他にも位相幾何学的グラフ理論における成果を得ている。
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