2005 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック系の伝導における相互作用と導線の効果
Project/Area Number |
17340115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
羽田野 直道 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (70251402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 学 東京大学, 生産技術研究所, 技術職員 (40396916)
榊 裕之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90013226)
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Keywords | 開放量子系 / 共鳴 / 複素固有値 / 量子ネルンスト効果 / ファノ共鳴 / フラクタル |
Research Abstract |
開いた量子系における導線の効果を正確に取り入れる理論構成を研究した。導線の効果をダイソン方程式の「自己エネルギー」の形で繰り込むと、導線との接点における複素ポテンシャルの形に表せる。これを用いて様々な系のコンダクタンスのピークと共鳴状態の間の関係を明らかにした。その結果、最近注目を集めているファノ共鳴は、よく言われているように「離散状態と連続状態の共鳴」ではなく、2つの離散状態の間の共鳴であることを明らかにした。 同じ開放系として、フラクタル構造中の電磁波の共鳴も議論した。簡単な例としてカントール集合における共鳴状態を具体的に計算したところ、共鳴寿命が非常に長い共鳴状態が現れることを明らかにした。それに対応して電磁波がフラクタル構造中で強く局在し、大きな増幅効果を得られることもわかった。これはデバイスへの応用も期待される。 量子ホール効果の現れる系において、熱磁気効果であるネルンスト効果を議論した。その結果、ネルンスト係数が周期的なピーク構造をとることを明らかにした。化学ポテンシャルがバンドの底に一致するとき以外は、ネルンスト係数がほとんどゼロになる。また、熱伝導度が階段状になることを発見した。これは実験でも検証可能な新しい予言であるので、「量子ネルンスト効果」と名付けた。不純物散乱を考慮しても、以上の構造は基本的には変化しないことも確認した。 この他、微小磁性体の電子スピン共鳴の応答や、ランダム行列の新しい統計普遍性についても調べた。
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