Research Abstract |
メゾスコピック系の伝導に対する共鳴状態の影響を議論し,大きく分けて3つの成果を得た。まず最初に,共鳴状態の一般論を見直して,共鳴状態においても粒子数の保存則が拡張された形で成り立っていることを示した。これは,共鳴状態でも正しく確率解釈ができることを示している。その知見を基に,共鳴状態の位置を複素平面上で正確に迅速に求める数値計算方法を提案した。これは,従来よく使われている複素回転法と全く異なる新しい方法である。2つ目の成果として,導線に伝導チャンネルが2つある場合を議論した。特に2つのチャンネルのエネルギーバンドが重なっているときに,非常に寿命の長い共鳴状態が普遍的にバンドの中央に現れることを示した。上側バンドの下側にある不純物準位が,下側バンドと弱く結合することによって長寿命になる。従来は,特殊な状況でのみ,バンドの中央に束縛状態が現れることが知られていたが,上の成果は実質的に束縛状態であるような共鳴状態が広いパラメータ領域で出現することを示した点で画期的である。3つ目の成果として,量子ドットの同じ箇所に2本の同線が着いている場合の新しいコンダクタンス公式を導いた。この公式には,離散状態(束縛状態,共鳴状態,反共鳴状態の総称)に関する和の2乗が現れる。この公式を使って,非対称のファノピークが,共鳴状態と束縛状態の間の干渉,あるいは共鳴状態間の干渉が原因であると理解できることを示した。これは,実エネルギーだけに限って現象を理解しようとする従来の見地と全く異なる,新しい視点を与えている。
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