2008 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック系の伝導における相互作用と導線の効果
Project/Area Number |
17340115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
羽田野 直道 The University of Tokyo, 生産技術研究所, 准教授 (70251402)
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Keywords | 共鳴状態 / ファノ共鳴ピーク / 干渉 / 量子ドット / 多体束縛状態 / アンダーソン模型 / エンタングルメント |
Research Abstract |
今年度の研究成果は大きく分けて2つあります。まず、複数のレベルがある(ただし相互作用のない)量子ドットの一カ所に導線が接続している系で、コンダクタンスを共鳴状態からの寄与のみで表す公式を導きました。この公式を用いて、非対称なコンダクタンスピーク(ファノ共鳴ピーク)が、共鳴状態間や、束縛状態と共鳴状態間の干渉によって引き起こされることを明示しました。共鳴状態間の干渉による非対称性は、束縛状態と共鳴状態の間の干渉による非対称性よりも、固有値間が近づいたときに大きく現れてくることを明らかにしました。特に、寿命が長くて鋭いピークの脇に、寿命が短くて幅の広いピークがあるとき、前者が強く非対称になることがわかりました。幅の広いピークも物理現象に顔を出すことがわかりました。 今年度のもう一つの成果は、相互作用のある量子ドット(相互作用する共鳴準位模型)において散乱状態を厳密に求めたことです。その結果、散乱後に粒子間に多体の束縛状態が出現することを発見しました。また、この厳密解に基づいて非平衡IV特性などを相互作用の無限次まで取り入れて計算することに成功しました。その結果は、他の数値計算などと定性的には矛盾していません。さらに、スピンのある模型(アンダーソン模型)についてこの散乱状態の厳密解を適用した結果、量子ドットを通過するとスピン間にエンタングルメントが発生することを、厳密に示しました。このエンタングルメント生成は、我々が発見した上述の多体の束縛状態に起因するものです。
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