2006 Fiscal Year Annual Research Report
液晶におけるパターン形成の解明-ソフトモード乱流と一般化揺動定理-
Project/Area Number |
17340119
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐 昌一 九州大学, 大学院工学研究院, 教授 (20112295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 芳樹 九州大学, 大学院工学研究院, 助手 (70274511)
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Keywords | 非線形物理学 / 非平衡統計物理学 / 自己組織化 / 物性基礎論 / ソフトモード乱流 / 時空間欠性 / 液晶 |
Research Abstract |
本研究では、非平衡開放系の散逸構造の示す非線形揺動の統計力学的な性質を、揺動散逸定理を中心とした平衡あるいは線形非平衡系で確立されてきた統計力学との比較により明らかにすることを目的としている。研究対象である液晶電気対流系では、液晶分子の配向制御によって場の対称性の異なる2種類の系をつくることができ、この対称性の違いによって現れる揺動にも違いがあることがわれわれの研究で明らかになってきている。本研究ではさらに次のような研究成果を得た。まず連続回転対称性をもつホメオトロピック系では、対流波数ベクトルと液晶配向子が一種の2次元XY系としてふるまい、両者の非線形相互作用によって「ソフトモード乱流」と呼ばれるマクロ揺動(時空カオス)が発生する。ソフトモード乱流には対流波数ベクトルと配向子の相互作用の対称性によってNormal RollsとOblique Rollsの2種類があるが、対流波数ベクトルをスピンと見なすことによって得られる「パターン磁化」を導入し、両者の間の転移が秩序-無秩序転移であることを見出した。またOblique Rollsに見られる特徴的な線欠陥が、マクロ揺動によって生じた液晶配向場の欠陥であることを明らかにした。一方、連続回転対称性が強制的に破れたプレーナー系では、欠陥格子と呼ばれる高次秩序構造において、その一部が乱流状態になった時空間欠性の統計的性質について調べた。その結果、空間の1点における秩序(欠陥格子)または無秩序(乱流)状態の持続時間分布が、広いパラメータ領域においてべき分布を示すことを明らかにした。さらにこの実験結果を説明するために、準安定ポテンシャル系に揺動力を加えたLangevin方程式型の現象論的モデルを導入した。その結果、揺動力が空間的な相関をもつときに持続時間分布がべき的になることを示した。
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