Research Abstract |
マグマ移動が明確に見られた2006年4月に発生した伊豆半島東方沖群発地震活動を,定量的に解析してダイク内部の過剰圧を推定し,過去の活動と比較した。2006年や,1996年の活動はダイクの深さが7〜9kmと深い。一方,1995年,1997年,1998年の活動ではダイク貫入深度は3〜7kmで浅い。これらの2つの活動を比較すると,1996年,2006年のように深いダイクの過剰圧は,浅いダイクの過剰圧に比べて5割程度大きい。この差は,ダイク貫入深度が過剰圧に支配されるというモデルを棄却し,浮力中立深度が異なる2種類のマグマの上昇により,この地域のダイク貫入活動が発生していることを明らかにした。このような,マグマ貫入を定量的に解析した例はこれまでほとんどなく,極めて重要な成果である。この結果を国際学会で発表した。 更に,火山噴火様式の違いをマグマ移動に伴う粘性消散が大きく関わっていることを,1986年伊豆大島噴火現象を例にしてモデル化した。この噴火では一連の噴火活動の中で,山頂噴火から山腹割れ目噴火に移行した,このような噴火様式の変化が,どのような物理法則により支配されているかについて,これまでほとんど判っていない。先行研究によれば,山頂噴火時と山腹割れ目噴火時では,単位時間当たりのマグマ貫入率が大きく異なることが知られていた。そこで,適当なモデルを考慮して,貫入によるマグマの体積増加とマグマの移動によって消費される粘性消散の大きさを山腹割れ目噴火と山頂噴火の場合について推定し,貫入率が相対的に大きいときには割れ目噴火を,貫入率が小さい時には山頂噴火が卓越することを証明した。現在,この研究の発展を目指し,成果を取りまとめている。
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