2005 Fiscal Year Annual Research Report
原始太陽系を形成した炭素質物質と鉱物の解明を目指して
Project/Area Number |
17340157
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
野口 高明 茨城大学, 理学部, 助教授 (40222195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 智樹 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (20260721)
木村 眞 茨城大学, 理学部, 教授 (20142226)
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Keywords | 宇宙塵 / 南極微隕石 / 惑星間塵 / ラマン分光 / アモルファス炭素 / ホイスカ |
Research Abstract |
今年度は,南極のドームふじ基地付近で2004年1月に採集された雪に含まれていた宇宙塵を特に研究対象とした。現地では雪の採取のみ行い,雪を茨城大学理学部で融解ろ過を行った。宇宙塵は雪105kgから49個発見できた。多孔質で脆い宇宙塵は全体の約25%を占め,強い水質変成作用を受けたものが5%,表面がわずか〜かなり溶融したものが55%であり,スフェルールは15%しか見出されなかった。この比率は氷を融解ろ過して得られた宇宙塵の場合とは大きく異なり,むしろ成層圏で回収された惑星間塵の形態に基づく比率とよく似ている。 宇宙塵に含まれる炭素質物質の解明は本研究における重要なテーマである。炭素質物質のキャラクタリゼーションを行う顕微ラマン分光装置を本科学研究費で購入した。分析にトラブルも生じたため,データの取得が行えるようになったのは今年1月になってからである。35個の宇宙塵についてラマン分光スペクトルを測定した。EDSスペクトルからは珪酸塩鉱物が宇宙塵の大部分を占めることが予想され,また,うち数個については放射光X線回折も行い,オリビンや輝石が主要鉱物であることが判明している。それにもかかわらず,珪酸塩鉱物由来のラマンバンドは測定することができなかった。同定できたものはアモルファス炭素,マグネタイト,ヘマタイトである。後2者は宇宙塵が大気圏に突入した際に形成されたものと考えられる。こうした珪酸塩鉱物のラマンバンドが測定できないということは,Wopenka(1988)が惑星間塵について報告している。彼は惑星間塵に含まれる炭素質物質が珪酸塩鉱物のラマンバンドをマスクしそいる可能性を述べている。本研究でも宇宙塵はCを2-6XCI(/Si)含むことが分かっており,惑星間塵と同様の機構で珪酸塩のバンドが測定されていない可能性が高い。これらの成果を2006年の学会で報告し,論文投稿を行う予定である。
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