Research Abstract |
昨年度に続き,天然のナノシートと考えられるスメクタイトとそれに関連する物質の高分解能電子顕微鏡(HRTEM)法による解析を進めた。昨年度は2人面体型2:1層の構造をもち,Alが主要な八面体陽イオンであるilliteの陽イオン分布(cis-vacantとtrans-vacant)のHRTEM法による識別の可能性と,電子線照射→脱水酸基化による陽イオン分布の変化を報告したが,今年度は八面体陽イオンが主にFe^3+とMgで占められる2八面体型雲母のceladoniteについて,同様な解析を試みた。先行研究で,celadoniteは本来trans-vacantの陽イオン分布を持つが,加熱による脱水酸基化により,cis-vacant構造に変化することが報告されている。CeladoniteのHRTEM観察ではcis-vacantの構造に対応したコントラストが観察され,電子顕微鏡内で脱水酸基化→陽イオンの移動が起こることを指示する結果が得られた。一方このceladoniteは,大気中での加熱による脱水酸基化で,α軸の周期が3倍になる超構造を形成することが報告されている。この超構造の原因をHRTEM法で調べ,これは2:1層の上下の四面体シートが完全に対向した,今までに報告されていない新しい層状珪酸塩の構造であり,超構造は八面体イオンの長周期配列によって起きていることを明らかにした。この結果はすぐに国際誌(AmericanMineralogists)に投稿し,掲載された。 またイモゴライトの合成において,加熱時間を長くすることにより,イモゴライトチューブの成長とその後の状態変化についての検討を行なった。その結果,イモゴライトチューブの成長が終わった後に,チューブ同士の重合がおきネットワーク構造を形成することが明らかとなった。
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