2006 Fiscal Year Annual Research Report
多次元核磁気共鳴法実験及び分子軌道法計算による高圧含水ケイ酸塩メルトの構造解明
Project/Area Number |
17340164
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
薛 献宇 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 助教授 (70362986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 正美 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 助教授 (90234153)
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Keywords | メルト / ガラス / 構造 / 水 / 核磁気共鳴法 / アルミノ珪酸塩 / 高圧 / 分子軌道法計算 |
Research Abstract |
本研究では高度な1次元・2次元NMR測定、分子軌道法計算、並びに系統的なアプローチにより、長年論争があったアルミノ珪酸塩メルト(ガラス)への水の溶解機構とその組成依存性を明らかにした。これは複雑な天然マグマの振る舞いを解明する上でマイルストンとなる成果と言える。具体的には以下の通りである。 (1)完全重合アルミノ珪酸塩メルトにおける水の溶解機構を巡る論争の決着: SiO_2メルトでは、水はSi-O-Si結合を切断しSiOHを形成することにより、メルトの重合度・粘度を下げると一般的にされているが、Alを含む系については、分光法データの解釈が曖昧なため、長年論争が続いてきた。本研究では原子間の繋がり情報を直接与える高度なNMR測定法を開発・応用することによってこの局面を打開した。Alを含む完全重合ケイ酸塩メルトにおいても、水はSiOH/AlOHを形成し、メルトの重合度を下げることを証明した。この成果はXue and Kanzaki(2006)に発表した。 (2)アルミノ珪酸塩メルトにおける水の溶解機構の組成依存性の解明:我々はこれまでの研究では、CaO-MgO-SiO_2系含水メルトには、SiOH種のほかに、メルトの重合度・粘度への効果が相反するfree OH((Mg, Ca)OH)の存在も確認し、反響を呼んだ。本研究ではさらにAlを含む系へ発展させた。また、高度な測定法の開発や分子軌道法計算にも力を入れた。その結果、Alを含む系でも、free OHが重要な含水種であることを証明し、そのメルト組成に対する分布も定量化した。成果の一部(測定法を中心に)はXue and Kanzaki(2007)に公表した。より完全な結果は我々が企画したIMA国際会議(2006年7月、神戸)におけるメルト・ガラスセッションで発表した。近いうちにGeochim. Cosmochim. Actaに投稿する予定である。 最後に、本研究により、高度なNMR測定法の有用性・必要性が証明され、その更なる開発とマグマ・鉱物への応用の方向性が示された。この研究課題自体は本年度で終了するが、このような取り組みは始まりに過ぎず、次の研究課題に繋げていくことが大事である。
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Research Products
(2 results)