2006 Fiscal Year Annual Research Report
嵩高く成長する置換基を用いた新規な有機ケイ素化合物の合成
Project/Area Number |
17350014
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂本 健吉 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (50187035)
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Keywords | 安定ジシレン / シリレン / 時間依存密度汎関数法 / シラノン / 環状σ電子系 / 立体障害 / 格子状骨格 / 有機ケイ素化合物 |
Research Abstract |
シクロアルカンの各頂点に別のシクロアルカンがスピロ結合した分子は「ロータン」と呼ばれている。ロータンはその対称性から幾何学的に興味深い分子であり、これまで、3員環や4員環がスピロ結合したものが合成されている。一方、ロータンの構造異性体であり、シクロアルカンの各辺に別のシクロアルカンが縮環した分子は「コロナン」と呼ばれている。[6.3]コロナンは、理論計算からシクロヘキサン環が平面になると予想されているが、未だその合成は報告されていない。コロナンで唯一合成が報告されているのは[6.5]コロナンであるが、その構造は平面型ではなく、イス型であることが明らかにされている。 本研究では、初めてのコロナンのケイ素類縁体である、ヘキサシラ[6.5]コロナン(1)の合成を行い、その構造や物性の解析を行った。合成は市販の1,1-ジクロロ-1-シラシクロブタンをカリウムグラファイトで還元することによって行った。コロナン1のX線結晶構造解析を行ったところ、1のケイ素6員環が平面に固定されていることが明らかになった。これは、ケイ素6員環を平面に固定した初めての例である。また、1の紫外吸収スペクトルを測定し、標準的なケイ素6員環状化合物であるドデカメチルシクロヘキサシラン(2)と比較した。その結果、1の紫外吸収スペクトルは2と大きく異なることが明らかになった。DFT計算から、この違いはケイ素6員環が平面に固定されることで、分子軌道準位の入れ替わりが起きたためだと分かった。コロナン1は、室温、有機溶媒中で蛍光を示した。シクロヘキサシランは通常、無蛍光性であり、水溶液中におけるシクロデキストリン包接錯体でのみ蛍光が観測されている。コロナン1で蛍光が現れたのは、堅固な骨格により無輻射失活が抑制されたためと考えられる。
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Research Products
(3 results)