2006 Fiscal Year Annual Research Report
高歪み中員環構造を有する天然薬理活性ラクトン類の不斉全合成
Project/Area Number |
17350023
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
椎名 勇 東京理科大学, 理学部, 助教授 (40246690)
|
Keywords | ボトチノリド / 2-エピボトチノリド / 9員環ジラクトン / 不斉アルドール反応 / 立体選択的合成法 / MNBA / 置換安息香酸無水物法 / アンチマイシン |
Research Abstract |
1993年に真菌類(Botrytis cinerea)より単離されたボトチノリドならびに2-エピボトチノリドに代表される化合物群は、天然界では稀な7つの連続する不斉炭素を含む飽和型単環性9員環ラクトンとして知られていた。我々は不斉アルドール反応ならびに2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(MNBA)を用いるラクトン形成反応を活用することでボトチノリド類の不斉全合成が達成できると考えた。まず不斉アルドール反応を鍵工程として、9員環部位のセコ酸を立体選択的に合成した。このセコ酸に対しMNBAを作用させたところ、室温という温和な条件で環化が円滑に進行し、目的の単量体ラクトンを71%という良好な収率で得た。これを合成中間体とし、別途不斉アルドール反応により構築した側鎖部位との分子間縮合を行なうことで2-エピボトチノリドの前駆体を得ることに成功した。しかしながら最終段階で保護基の除去を実施したところ、系内で生じた9員環ラクトンのトランスアシル化が進行し、推定されていた構造はより安定な5員環ラクトンに変換された。以上の結果によりボトチノリド類の提案構造は誤りであることを合成化学的に明らかとした。 一方、上記ボトチノリド類の合成研究に引き続き、アンチマイシンA_<3b>に代表される9員環ジラクトン系抗生物質の全合成研究を行った。不斉アルドール反応を駆使し調製したセコ酸の環化を試みたところ、この場合も望みの9員環ジラクトン部を高収率で得ることに成功した。現在、合成した中員環状分子に側鎖部を導入し、最終構造へめ変換を試みている。
|