2006 Fiscal Year Annual Research Report
金属-酸素活性種の詳細解析と新酸化触媒系への合成的展開
Project/Area Number |
17350029
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 文都 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教授 (80281195)
|
Keywords | 酸素 / 遷移金属イオン / 鉄 / 酸化反応 / 分子触媒 / ポルフィリン |
Research Abstract |
これまで、鉄ポルフィリン錯体に4個の光学活性ビナフトール誘導体が結合した化合物を合成して、研究を進めてきた。基質がジエン(炭素-炭素二重結合が2個)の場合は、反応が進行するが、トリエン(同3個)やテトラエン(同4個)など基質分子が大きくなると反応が進行しづらい傾向があったため、錯体の構造の柔軟性を高めるために、2個の光学活性ビナフトール誘導体が結合した化合物を合成した。 2個のビナフトール誘導体がポルフィリン面の同じ側に結合したものと違う側に1個ずつ結合したものの二種類の異性体を分離した。特に、前者の錯体の構造をX線単結晶構造解析により、詳細に明らかにした。金属イオン中心上方に、疎水性キャビティがあり、基質の取り込みと認識が行われる不斉反応場が形成されている。ナフトール水酸基と金属中心との距離が約4.8Aであり、酸化活性種においてナフトール水酸基がナフトキシラジカルとなったときに、反応に適した距離であることが確認された。この二種類の錯体を過酸で酸化すると、ナフトキシラジカルと鉄の高原子価(4価)からなる活性種が生成することを、ESRや吸収スペクトルで確認した。さらに、この活性種を基質であるジエンと反応させると、出発の錯体が生成するとともに、基質がペルオキシドへと酸化されることを確認した。 ただし、2個のビナフトール誘導体が結合した錯体では、4個のビナフトール誘導体が結合した錯体に比べて、ナフトキシラジカルの安定性が低かったため、さらに新しい錯体の合成を行った。メソ位のフェニル基にかさ高いtert-Bu基を導入して、ナフトキシラジカルを立体的に保護すると思われる錯体(2個のビナフトール誘導体が結合したタイプ)を同様の合成経路で合成し、二種類の異性体の分離にも成功した。
|
Research Products
(4 results)