Research Abstract |
前年度,テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-キャビタンド1とテトラ(4-ピリジル)-キャビタンド2が水素結合によってヘテロカプセル1・2へと自己集合し,対称および非対称para-二置換ベンゼンを配向制御して包接すること,また,包接ゲストはその分子長軸上で回転することを見出した。本年度は,(1)1・2の包接ゲストの回転速度・回転障壁エネルギー,(2)ゲストのF置換基による配向制御,について研究した。 [1]ヘテロカプセル1・2に包接されたゲストの回転速度定数・回転障壁エネルギーヘテロカプセル1・2の包接ゲストとして,2,5-二置換ベンゼン-p-ジアセトキシベンゼンを用いた。2,5-位の置換基がH,CH_3の場合,-80℃でも高速回転し^1H NMRで回転速度、回転障壁を算出できなかった。一方,OC_8H_<17>の場合,50℃でも回転停止していることが^1H NMR測定からわかった。OCH_3,OC_2H_5,OC_3H_7,OC_4H_9の場合,温度可変^1H NMR測定と線形解析から回転(交換)速度定数(κ)、回転障壁エネルギー(Ea)を算出できた。この置換基順で,20℃の場合のκ(s^<-1>)は30,000>860>120>25と減少し,Ea(kcal/mol)は8.8<10.7<11.4<13.0と増加した。また,OCH_3に関しては単結晶X線構造解析に成功し,-173℃でもゲストは回転停止しなかった。このように2,5-位置換基によってpara-二置換ベンゼンの回転を制御できることがわかた。[2]非対称ゲストのフッ素基による配向制御P-エトキシ安息香酸メチル3やp-アセトキシ安息香酸メチル4は,CO_2CH_3基を選択的にピリジルホスト2側に配向して1、2に包接された(93:7 for 3,84:16 for 4)。これら非対称ゲストの2位または3位にF基を導入すると包接配向選択性が変化し,>98:<2 for 2F-3,91:9 for 3F-3,87:13 for 2F-4,73:27 for 3F-4となり,常にF基の隣接置換基が2側に配向しようとする性質をもっことがわかった。また,P-エトキシ-2-フルオロ安息香酸メチル(2F-3)に関しては単結晶X線構造解析に成功し,-173℃でゲストは回転停止していた。 以上の結果は,超分子ジャイロスコープや電子デバイスへの展開に基礎的知見を与えると思われる。
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