2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17350074
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
加納 航治 同志社大学, 工学部, 教授 (60038031)
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Keywords | ミオグロビンモデル / シクロデキストリンダイマー / 酸素親和性 / 一酸化炭素親和性 / 自動酸化機構 / アニオンの効果 / 酸素分子 / 求核攻撃 |
Research Abstract |
前年度までに水中で機能するミオグロビン(Mb)機能モデルの構築に成功している。すなわち、水溶性鉄(II)pポルフィリン(Fe(II)TPPS)とピリジンをリンカーに有するパーメチル化シクロデキストリンダイマーの包接錯体(hemoCD)が、水中で可逆的に酸素分子を吸脱着することを見出した。今年度はさらに閃光分解法を用いた動力学的な検討を行い、酸素および一酸化炭素結合速度とoxy-hemoCD並びにCO-hemoCDからの酸素およびCO脱離速度を測定した。その結果、K_<on>については顕著な異常性は認められなかったが、K_<off>^<CO>は異常に小さな値を示した。CO-hemoCDの共鳴ラマンスペクトルの結果から、CO-hemoCDの配位結合は極めて弱いと推定されるにも関わらず、この一酸化炭素錯体が生体系や有機溶媒中のモデル系に比べて安定な理由は、シクロデキストリンが作り出す疎水的で狭いcleft中では、CO-hemoCDから脱離した疎水性の高いCO分子は、バルク水層へ拡散することなくcleft内に留まるため、再結合が容易に進行し、見かけ上CO-hemoCDを安定化するものであると結論した。 oxyMbやoxyHbの自動酸化機構は多くの研究がなされているにもかかわらず、タンパク質の複雑さから、いまだに解明されていないのが現状である。我々のモデル系はタンパク質とは異なり、極めて単純化されているため、Fe(II)ポルフィリンの酸素錯体の自動酸化機構を明らかにすることができる。自動酸化に及ぼすpHおよび無機アニオンの効果を速度論的に検討した結果、oxy-hemoCDの自動酸化は水分子や無機アニオンが求核剤となって作用するShikamaらの提唱してきた機構が正しいことを証明することができた。 これまで、水中で機能するMbやHbモデルの構築が困難であった理由は、タンパク質グロビンが作り出す疎水的な環境を鉄ポルフィリン周辺に提供することができなかったため、水分子による自動酸化を防げなかったことが原因である。分子動力学計算によると、hemoCDにおけるポルフィリン鉄中心は、2つのメチル化シクロデキストリン、ポルフィリンのメソ位にある2つのスルホナトフェニル基、およびピリジンリンカーによって完全に覆われた環境にあることが分かった。 今年度は、アキシャル塩基としてイミダゾールを有するモデル化合物も合成に成功し、その酸素親和性がピリジンを塩基とするhemoCDよりも高いことを見出している。さらに詳細を検討中である。
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Research Products
(5 results)