2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17350074
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
加納 航治 同志社大学, 工学部, 教授 (60038031)
|
Keywords | ミオグロビンモデル / シクロデキストリンダイマー / 酸素親和性 / 一酸化炭素親和性 / 一酸化窒素親和性 / 水中の酸素捕捉 / 自動酸化 / 酸素付加体 |
Research Abstract |
(1)昨年度は、グロビンモデルとしてピリジンで連結されたO-メチル化β-シクロデキストリン二量体(Py3CD)を用い、それと水溶性ポルフィリン(Fe(II)TPPS)との包接錯体「hemoCD」を構築した。hemoCDは単純な系でありながら、水溶液中で機能する良好なミオグロビンモデルであることをこれまでに報告している。しかし応用を考えた場合には、Py3CDの合成が繁雑であり、その収率も低いことが問題となる。本年度は簡便に調製できるミオグロビンモデルの構築を目指し、新たなグロビンモデル(Py2CD)を二段階で合成することを試み、成功した。さらに、PyCD2とFe(II)TPPSとの包接錯体(1)の示すミオグロビンモデルとしての機能について検討した。吸収スペクトル測定により1が水溶液中で酸素錯体を形成することを確認した。共鳴ラマンスペクトル測定より得られたFe-O_2の伸縮振動数(v_<Fe-O2>=568cm^<-1>)がウマのミオグロビン(v_<Fe-O2>=571cm^<-1>)とほぼ一致したことより、1は良好なミオグロビンモデルであることが示された。1はhemoCDと同様に可逆的に酸素を吸脱着することができ、また多くのモデル化合物が一酸化炭素に対して不可逆的な吸着をするのに対し、1は一酸化炭素の吸着も可逆的であることが明らかとなった。それぞれの親和性はhemoCDのそれよりも低いが、1は著しく自動酸化を抑制することが明らかとなった。これは、Py3CDよりもPy2CDがポルフィリンを非常に強く包接し、自動酸化を促進する水分子の進入を著しく抑制したためだと考えられる。 (2)Py3CDやPy2CDは2つのO-メチル化β-シクロデキストリンを、ピリジンを含むリンカーで結合させて、ピリジンをFe(II)へ配位させて機能発現を行っている。しかし天然のミオグロビンやヘモグロビンへはヒスチジンのイミダゾールがFe(II)へ配位している。この相違は、Fe(II)への電子供与性に違いを生じるため、酸素親和性に大きな違いが生まれる。そこで昨年度から試みてきたイミダゾールをリンカーとするシクロデキストリン二量体(Im3CD)を合成し、その機能を研究した。その結果、1m3CDのFe(II)TPPS包接錯体は、hemoCDよりも10倍も高い酸素親和性を示すことが明らかになった。しかし、その酸素付加体はoxyhemoCDに比べて約10倍も不安定であった。これはリンカーをアミド結合でシクロデキストリンに結合させたため、Im3CDのflexibilityが不足し、2つのシクロデキストリン間の間隙が大きく、そのために水分子がO_2-Fe(II)結合を攻撃して、比較的速い自動酸化を引き起こすためであることが判明した。 (3)今年度から新たな試みとして、これまでに構築してきたミオグロビンモデル化合物の一酸化窒素親和性につき検討を始めた。これまでNOの自動酸化機構が不明であったが、我々のモデル系からこの機構を明らかにする。
|
Research Products
(5 results)