2005 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン導電性リン酸二量体電解質を用いた中温領域型燃料電池の創製
Project/Area Number |
17350091
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日比野 高士 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (10238321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 充 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (90144097)
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Keywords | 燃料電池 / リアクター / ガスセンサー / プロトン導電体 / 電極触媒 |
Research Abstract |
本年度は昨年度までに見出したプロトン導電体SnP_2O_7に関して、そのプロトン導電率のさらに高めることを目的に、Sn(IV)イオンの一部を低原子価(III)カチオンで置換し、固体内のプロトン濃度を増大させることを試みた。また、このプロトン導電体を使用して、無加湿の中温作動燃料電池を構成することも併せて検討した。 SnP_2O_7へのドーパントカチオンとして種々のIII価カチオンを検討したところ、Inイオンが唯一プロトン導電率を高める効果があり、10mol%まではドーピング量とともに導電率が増大し、200℃で1.9×10^<-1>Scm^<-1>に達することがわかった。この材料のプロトン輸率を測定するために水素ガス濃淡電池を構成したところ、観察された起電力は理論値と近い値であり、プロトン輸率がほぼ1であることが判明した。昇温脱離法(TPD)から固体内に溶解したプロトン量はInイオンドーピング量と同じ値の10mol%であったことより、ドーピングによって固体内にプラスの点欠陥(電子ホールと酸素イオン空孔)が導入され、これらと外気中の水蒸気との交換反応を通して固体内のプロトン濃度が増加したと考えられる。 次にこの材料を電解質に使用して中温作動燃料電池を構成したところ、250℃・無加湿雰囲気であるにも関わらず開回路電圧が約900mV、最大出力密度が264mW cm^2に達するまでに至った。加えて、本燃料電池は水素燃料ガス中に10%の一酸化炭素が混入していてもアノード分極特性が全く影響されないこともわかった。これによって、固体高分子形燃料電池(PEFC)で必要なシフト反応器や一酸化炭素除去器が不要となり、PEFCに比べてシンプルで低コストなシステムを構成することを期待できる。さらに、本燃料電池の特長を活かしてアノードからのPtフリー化についても検討を行った。遷移金属酸化物や炭化物などいろいろな材料を試験した結果、Mo_2CがPt並のアノード分極特性を示し、これによってPtフリーでも十分高い出力特性を発揮できることが見出された。これは中温領域で作動する本燃料電池のもう一つの特長である。
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