2006 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン導電性リン酸二量体電解質を用いた中温領域型燃料電池の創製
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17350091
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日比野 高士 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 教授 (10238321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 充 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 教授 (90144097)
長尾 征洋 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 助手 (40432223)
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Keywords | 中温プロトン導電体 / 燃料電池 / Pt代替触媒 / 触媒設計 |
Research Abstract |
高分子形燃料電池(PEFC)は100℃以下での作動が求められるため、それに起因するいろいろな課題を有している:(1)過度な加湿条件を必要とする、(2)アノード触媒に深刻なCO被毒をもたらす、(3)電極反応が円滑に進まないため高価なPt触媒を必要とする。そこで、In^<3+>ドープSnP_2O_7を電解質に使用して中温燃料電池を構成し、これらの課題を克服することに努めた。昨年度までの成果として、150〜250℃で無加湿のH_2と空気をアノードとカソード(いずれもPt/C電極)にそれぞれ供給したところ、900mV程度の開回路電圧が発生し、しかもそこから比較的大きな出力を得ることができた。また、中温領域でのPtアノード触媒のCO耐性を評価するために、作動温度250℃でCOを含んだH_2をアノードに供給した。観察された放電曲線は、燃料ガス中のCO濃度(0〜10%)に関わらず全く同じ特性を示し、本燃料電池のアノード触媒がCOに対して優れた耐性を持っことが見出された。さらに、中温領域ではPt代替触媒を使用できる可能性もあるごアノードについて遷移金属酸化物や炭化物を中心に探索を行った結果、Mo_2Cが中温において有望な代替触媒であることが分かった。また、触媒調製時にMoとともにZr種を少量添加することで、アノード過電圧がさらに小さくなり、Pt触媒並の値にまで低下した。 今年度は、中温作動の特長をさらに活かし、カソードについてPt代替触媒の開発を行った。種々の遷移金属酸化物をカーボンに担持し、それらのO2還元活性を250℃で評価した。どの金属酸化物もPtに比べ触媒活性が劣るものの、カーボン単独よりは高い活性を示していた。このうち、一番活性の高かったZrO_2に着目し、その触媒活性の担持量依存性を調べた結果、20wt.%の時にカソード過電圧が最も小さくなった。さらに、ZrO_2の触媒活性は熱処理温度にも影響を受け、650℃の時にカソード過電圧が最小値を示した。これらの最適化によって、ZrO_2のカソード過電圧を最終的にPtの値に対して約2倍相当まで小さくすることができた。ここで興味深い結果として、各温度で熱処理したZrO_2の結晶構造をXRDで分析したところ、ZrO_2はどの熱処理温度でも単斜晶と正方晶の混合相として存在しており、熱処理温度650℃で正方晶の割合が最も多くなることが見出された。この結果はカソード過電圧の熱処理温度依存性とよく対応していることから、正方晶のZrO_2がO_2還元反応に有効な触媒として働いていることを示唆する。最後に、アノードにMo_2C-ZrO_2、カソードにZrO_2を使用した燃料電池の放電特性を測定した。放電時の電圧降下は作動温度の上昇とともに減少し、燃料電池からのPtフリー化には中温作動が不可欠であることが分かった。しかしながら、本燃料電池の出力密度は、同条件下でのPtを使用した値に比べて、5分の1程度であった。これは主にカソードの性能がまだ不十分なためであるので、次年度への課題としてZrO_2の電子構造や微構造などを改善することが強く要求される。
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Research Products
(8 results)