2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17360005
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
酒井 政道 埼玉大学, 工学部, 助教授 (40192588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 裕之 東京大学, 物性研究所, 助教授 (60207032)
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Keywords | 横磁気抵抗 / ホール抵抗 / イットリウム / イットリウム二水素化物 / 補償金属 / 水素 |
Research Abstract |
六方最密構造(h.c.p.)をもつイットリウム(Y)は、自発的に(負のエンタルピー変化を示しながら)、水素を取り込んで、二水素化物YH_2を生成、さらに三水素化物YH_3に変化していく。YH_3は絶縁体であるのに対してYH_2は金属である。17年度では、YH_2の金属的性質が同じ様に金属である水素化前のh.c.p.Yの金属状態と比べて、どのような点で類似し、どのような点で異なるのかを磁気電気輸送特性と光学特性を調べ、それらの測定結果に基づいて、YおよびYH_2における電気伝導モデルを提案した。 17年度実績のひとつは、YH_2を評価するにあたって、水素化前のYにおける電気伝導キャリヤ特性、即ち、キャリヤ濃度と移動度を評価した点である。測定用のY試料は、純度3Nインゴット原料から、スパッタ法あるいはイオンプレーティング法によって厚さ約300nmに成膜した。X線回折によって、h.c.p.構造をとることが確認された。このYを500ppm〜3%の水素濃度、300〜400℃で水素雰囲気処理することによって、YH_2薄膜を生成した。X線回折により面心立法構造(f.c.c.)であることが、また、水素前方散乱とラザフォード後方散乱による組成分析によってY:H=1:2のストイキオメトリーから僅かに偏位し、YH_<2+δ>(-0.3<δ<0.05)であることが確認された。 水素化前のYと上述のように水素化した試料の比抵抗(横磁気抵抗)とホール抵抗を磁場1Tの範囲で、また、光学反射スペクトルを0.05から6eVのフォトンエネルギー範囲で測定した。測定は全て室温で行った。前者の磁気電気輸送測定では、磁場変化の効果のみを検出するために、電磁石下で使用できる恒温試料容器を製作・使用することによって測定中の試料温度の変動を±0.02K以下にした。これにより弱磁場条件での比抵抗とホール抵抗の磁場依存性を明確に測定することが出来た。 ホール抵抗は、YとYH_<2+δ>ともに磁場に比例するが、前者が負の傾きに対して後者が正の傾きを示した。特に、YH_<2+δ>では、δの値によってその傾き(ホール係数)が変化し、δ=-0.1付近で最小値≒5×10^<-12>m^3/Cを示すことが見出された。一方、横磁気抵抗は、YとYH_<2+δ>ともに磁場の2乗に比例することが見出された。これらの測定結果を複数キャリヤモデルによって解析することによって、YとYH_2ともにi)補償金属であること、ii)その電子と正孔の移動度が数%の範囲で殆ど同一であること、iii)水素化によって電子・正孔濃度が約7倍に、移動度が約3倍に増加することが見出された。
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Research Products
(5 results)