2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17360005
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
酒井 政道 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 助教授 (40192588)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 裕之 東京大学, 物性研究所, 助教授 (60207032)
|
Keywords | 横磁気抵抗 / ホール係数 / モリブデン / イットリウム二水素化物 / 補償金属 / 水素 / 反射スペルトル / ドルーデ型誘電関数 |
Research Abstract |
1.高純度原料を用いたイットリウムニ水素化物および標準的補償金属試料Moの作成: 母体イットリウム(Y)の純度がこれまでに比べて1桁高い、4N原料から、Y薄膜の作成を試みた。しかしながら、3N原料を使用した場合に比べて膜中に酸素を取り込み易く、目的とする薄膜試料が得られなかった。また、磁気抵抗測定の標準試料として、補償金属としての性質が良く知られているMoの薄膜を作成した。 2.磁場5Tまでのホール抵抗および磁気抵抗測定: 超伝導マグネットを用いて5Tまでの範囲で測定した。尚、18年度も3N原料から作成したYH_<2+x>(x=-0.23,0.04)について300Kで測定した。その結果、ホール係数R_Hとしてx=-0.23の場合R_H=9.0×10^<-12>m^3/C, x=0.04の場合R_H=1.8×10^<-11>m^3/Cが得られた。一方、標準試料として作成した補償金属であるMoは、同じ条件で測定すると、R_H=5.0×10^<-11>m^3/Cであった。このことから、YH_<2+x>がホール係数が極めて小さい補償金属であることが分かった。YH_<2+x>(x=-0.23,0.04)の横磁気抵抗は、磁場の2乗に比例することが分かり、その比例係数とゼロ磁場比抵抗を用いて、キャリヤ濃度と移動度を評価した。その際、ホール係数がゼロに近いことを考慮して、電子と正孔が等しいキャリヤ濃度・移動度を持つと仮定した。その結果、x=-0.23の場合、n=4.9×10^<27>m^<-3>,μ=1.6×10^<-3>m^2/Vs、x=0.04の場合、n=1.2×10^<27>m^<-3>,μ=4.0×10^<-3>m^2/Vsであった。ホール係数はゼロに近いものの有限値が観測されている。これは電子と正孔では移動度が完全に等しくないためである。ホール係数と先に決定したキャリヤ濃度から、移動度の違いを算出すると、x=-0.23の場合、Δμ=2.2×10^<-5>m^2/Vs, x=0.04の場合、Δμ=2.8×10^<-5>m^2/Vsのように移動度違いは数%程度であった。キャリヤ濃度のみならず、移動度もほぼ等しい補償状態は、従来の補償金属では見出されていないので、水素化物特有の性質であると考えられる。 3.光学反射スペクトルとの整合性: 本研究で測定した反射スペクトルは、低エネルギー側が自由電子由来のドルーデ型で、高エネルギー側がバンド間遷移の特徴を示す。磁気抵抗測定から決定されたキャリヤパラメータを用いて、ドルーデ型誘電関数を計算すると、観測スペクトルを定量的に再現できることが分かった。磁気抵抗測定から評価されたパラメータは、光学測定と矛盾しないことが確認できた。 4.水素過剰型型SmH_<2+x>(x=0.16)の作成および比熱・帯磁率の温度依存性: 比熱と帯磁率の測定を行い、重い電子と反強磁性の共存や価数混合状態の可能性を指摘し、SmH_2と異なる特異性を明らかにした。
|