Research Abstract |
1、SmHx(2.2<x<2.6)の誘電関数における水素濃度の影響について 水素化物SmHxで,H/Smが2.2〜2.6の薄膜を作成し,八面体サイトの水素占有濃度が,キャリヤ特性および電子構造にどのような影響を与えるのかを明らかにするために,(1)膜中化学組成分析,(2)結晶構造解析,(3)電気伝導特性,(4)光学反射および透過スペクトルを測定、解析した。 薄膜試料は電子ビーム蒸着装置を用いてSmを石英基板上に成膜し,これをArガスと水素ガス(0.5〜3.0%)雰囲気中,焼成温度(280〜300℃)で15分間保持することにより作成した。水素濃度,焼成温度,焼成時間を変化させることにより,2.2<x<2.6の範囲のSmHx薄膜を作成することができた。膜中の組成分析をRBS,HFS,XPSのよって行い,膜中の酸素がない高品質試料について,比抵抗測定を10〜300Kの温度範囲で行い,また,反射スペクトル測定をフォトンエネルギー0.05〜6eVの領域で行い,複数のモデル誘電関数を用いた分散解析法によってこの物質における誘電関数を求めた。確認のため,Kramers-Kronig解析によって誘電関数を評価したが,分散解析法と同様なスペクトルが得られた。 SmHx(2.2くx<2.6)の誘電関数には,次のような特徴が観測された:(1)帯問遷移にもとづく構造が,1eVと3.5eV付近に観測される,(2)水素濃度の増加と共に,3.5eVの遷移エネルギーが2.5eVまでレッドシフトする,(3)水素濃度の増加と共に,1eVの遷移強度が弱くなる,(4)自由キャリヤによるプラズマ周波数が水素濃度の増加と共に減少する。尚,誘電関数には,上記のような水素濃度依存性が観測されたが,格子定数は殆ど変化しないことがX線回折実験により確認された。 2,YHxを用いたI×B力におけるホール効果の役割について 磁場中の電流を流した導線全体に働くカは,自由電子に作用するローレンツカとつりあうように発生したホール電場が導線中の静止した正イオンに作用することによって説明されている。この点を検証する目的で,YHxのホール係数が通常の金属に比べて約20分の1であることに注目し,通常の金属も含めて,I×B力の測定を行った。その結果,観測されたI×B力は,物質のホール係数の大きさに依存しないことが分かった。このことを,格子イオンの存在も考慮した電子論で定量的に考察した。
|