Research Abstract |
昨年度までに,電子ビームのエネルギー密度や照射回数などの照射条件が平滑化特性に及ぼす影響について明らかにし,平滑化のための最適条件を明らかにした.また,照射断面の光学顕微鏡観察やTEM観察により照射面の構造を明らかにし,電子ビーム照射最表面には数ミクロン以下の最凝固層が形成されること,そして結晶粒の小さい組織を形成することがわかった.さらに再表面の組織を分析したところ,成分の変化はないが構造は異なっていることが判明した.つぎに,各種の表面特性について評価したところ,若干の硬度低下が生じるものの,撥水性が向上すること,耐食性が向上することを明らかにした.すなわち,金型の表面特性として必要とされる耐食性や撥水性の改善を表面の平滑化と同時に行えるため,有用な表面処理法であることが示された. 本年度は,まず,昨年度改良を行ったビーム発生電源部を用いたミリ秒オーダー照射時間について検討を行った.その結果,数百μmの非常に厚い再凝固が得られるものの,表面には大きなクレータが発生するため,現段階では表面平滑化法としては適用が難しいことが分かった. 次に,実用化に向けた傾斜面平滑化特性の解明を行った.すなわち,一般に金型は複雑な形状を有しており,効率的に表面の平滑化を行うためには,傾斜した面に対しても十分な平滑化が可能であることが望ましい.傾斜面の平滑化を検討した結果,傾斜角70°程度までは,電子が照射試料表面の形状に倣ってある程度均一なエネルギー密度で照射されるため,試料の傾きなどの調整なく,大面積を一括して均一に平滑化できることが分かった. さらに,電子ビーム照射による表面除去量の測定を行ったところ,一回の照射での除去量は数十nmレベルであり,大面積が均一に除去されることが分かった.したがって金型の表面形状精度が悪化することなく,表面処理が行えることがわかった.
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