Research Abstract |
バイオチップなどのガラスの検査基板における微細流路は,現在,フッ酸を用いた化学エッチングによって加工されている.しかしながらその工程数が多く化学反応に時間を要すること,フッ酸の廃液処理などの二次的作業を有することから,納期およびコストの面で多くの問題を抱えている.このような現状に対して,本研究ではボールエンドミルによるガラスのマイクロ切削加工技術の開発した.平成18年度では,以下の技術的課題に対して具体化を図った. (1)小径ボールエンドミルの動特性測定と切削過程のモデリング 本研究におけるガラスの切削では,エンドミルを傾斜させて溝加工を行うため,加工中の工具のたわみや振動が問題となる.一般に,工具の動特性はインパルス応答法によって推定されるが,小径エンドミルの場合は,工具が折損しやすいためこの方法が適用できない.そこで加振試験により小径エンドミルの動特性の推定を試みた.これに基づいて数値解析を行い,切削中のエンドミルの動的挙動を解析した. (2)ガラス加工における切削条件の最適化 ガラスのエンドミル加工では,軸方向に大きな切込みが与えられるものの,送り速度は一つの切れ刃が一回の回転で除去する切削厚さに相当するため,十分に小さくとる必要がある.今年度はこのような問題に対して,切れ刃数を2枚刃から8枚刃にすることで,脆性損傷のなくガラスを切削するための最大送り速度を向上させた.また,工具の逃げ面の接触は,切れ刃下側,すなわち製品側へのき裂の進展を抑制するため,逃げ角のない切れ刃を有するエンドミルを開発し,さらなる切削製の向上を図った.その結果,送り速度は従来のボールエンドミルに対して10倍程度の速さで加工でき,工具寿命もこれに応じて延びることを明らかにした.なお,加工面の評価に対しては,エンドミルの加工痕による親水性,撥水性の変化は小さく,カッターマークが検査機基板の試験精度に及ぼす影響が小さいことを確認した.
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