溶射皮膜の微細構造制御による新しい防食・防汚コーティングの開発

2006 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 17360426
• Research Institution: National Maritime Research Institute
• Principal Investigator: 村上 健児 独立行政法人海上技術安全研究所, 構造・材料部門, グループ長 (60112067)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 千田 哲也 独立行政法人海上技術安全研究所, エネルギー環境評価部門, 部門長 (80344240) ; 植松 進 独立行政法人海上技術安全研究所, 構造・材料部門, 上席研究員 (10344235) ; 高橋 千織 独立行政法人海上技術安全研究所, エネルギー環境評価部門, グループ長 (40399530)
• Keywords: 溶射コーティング / アルミニウム-鋼合金 / 急速凝固 / 防食 / 構造 / 密着性 / 電気化学的特性 / 下地溶射

Research Abstract

船底に大型付着生物が付くのを防ぐために銅化合物を含む防汚塗料が広く使われ、また船舶や港湾鋼構造物には防食のための塗装が施されている。これらの塗装は時間の経過とともに劣化するので、定期的に塗装を施しなおす必要がある。そこで、対象とする鋼材表面に、防食効果のある金属と防汚効果のある金属を溶射法によって同時にコーティングし、このコーティングの微細構造およびコーティング中での両金属の存在状態が、コーティングの防食・防汚効果に及ぼす影響を調べことによって、長期間にわたり防食・防汚効果を持つ新しいコーティングを開発することを研究の目的とする。平成18年度はアルミニウム-銅合金(20mass%Cu及び40mass%Cu)を溶射材として、均質な溶射コーティングの作製、コーティングと基材との密着性向上、皮膜の構造解析及び電気化学的特性の測定を行った。
(1)均質な溶射コーティングの作製:平成17年度には溶射ガンを手に持って操作していたが、平成18年度には溶射ロボットにガンを取り付けて溶射を行った。その結果、コーティングの均質性、再現性及び溶射条件の精密な設定が可能となった。
(2)コーティングと鋼基材との密着性向上:溶射に先だって鋼基材を適度に予熱することによってコーティングと基材との密着性を向上させることができた。アルミニウム-銅合金を溶射する前に純アルミニウムを下地溶射すると、密着性を更に向上させることができる。特に、密着性の低いAl-40mass%Cu合金コーティングにおいて下地溶射の効果が顕著である。
(3)皮膜の構造解析及び電気化学的特性の測定:溶射したままのコーティングは、銅を過飽和に固溶したアルミニウムとCuAl_2金属問化合物から成り、溶射に特徴的な気孔を多量に含む。このコーティングを523Kで2日間熱処理すると過飽和固溶体は分解して銅をほとんど含まないアルミニムになるとともに、CuAl_2金属間化合物の分率が増え、また気孔率は減少する。電気化学的測定の結果、溶射したままの皮膜の方が熱処理した皮膜よりも電気化学的に貴であることが示された。これは溶射したままのコーティングは多量の銅を固溶しているためであると考えられる。熱処理の有無にかかわらず、皮膜は防食効果を持つ。