Research Abstract |
卵巣の主たる役割は,生殖細胞(すなわち卵)を供給することである。成熟した脊椎動物の卵巣では,内分泌制御の下で,濾胞成長,排卵,排卵後の組織修復というプロセスをそれぞれの種に特有の周期で繰り返す。メダカではこのプロセスが迅速に進行する。本研究の目的は,メダカ卵巣を材料として,脊椎動物に共導する排卵後の組織修復のメカニズムを明らかにすることである。本年度においては,以下の成果を得た。 当該研究室におけるこれまでの研究から,gelatinase B, MT2-MMP, cathepsin L, Fibroblast growth factor-3 (FGF-3)およびFibroblast growth factor receptor-3 (FGFR-3)が排卵後の組織修復に関わる可能性が示唆された。そこで,これらの遺伝子が修復プロセス解析のためのマーカーとなり得るか否かを検討した。 gelatinase B, MT2-MMP, cathepsin LのmRNAレベルは,いずれも排卵時およびそれ以降において高発現することが確認された。さらに,排卵後の組織修復は,これらの遺伝子産物(プロテアーゼ)の活性阻害剤の添加により有意に遅延することが,形態学的観察から明らかにされた。組織修復過程におけるgelatinase B, MT2-MMP, cathepsin Lの細胞外マトリックスタンパク(特にコラーゲンIおよびIV)への作用を調べるために,メダカ由来のコラーゲンIおよびIVに対する特異的抗体を作製した。抗体入手により形態学的・生化学的解析が可能な状況となった。 FGF-3およびFGFR-3は,いずれも排卵時に最大の発現レベルを示し,排卵後の組織では発現が徐々に減少した。
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