Research Abstract |
生殖器官としての卵巣の役割は,受精のための卵母細胞を供給することにある。成熟した脊椎動物の卵巣においては,濾胞成長,排卵,排卵後の組織修復というプロセスをそれぞれの種に特有のサイクルでくり返えされる。本研究で実験材料としているメダカでは,上記のサイクルが1日でくり返されることによって,毎日の排卵を可能にしている。この研究の目的は,メダカを用いて,脊椎動物に共通する排卵後の組織修復の分子メカニズムを明らかにすることである。本年度においては,以下の成果を得た。 1.メダカにおいては,卵巣における排卵後の組織修復は約35時間程度で完了することが明らかになっている。組織が消滅する過程では,各種のタンパク質分解酵素が関与すると予想される。そこでプラスミノゲンアクチベータ/プラスミン系の役割を検討するために,メダカのプラスミノゲンアクチベータとプラスミンをコードする遺伝子/cDNAを単離し,卵巣におけるこれら遺伝子の発現を調査した。メダカのプラスミノゲンアクチベータは,哺乳類と同様に,2種類(ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータと組織型プラスミノゲンアクチベータ)があることが判明したが,卵巣においてはウロキナーゼ型ブラスミノゲンアクチベータのみが発現していた。プラスミンをコードする遺伝子発現は卵巣では確認されなかった。しかしながら,抗体を使用した解析からは,プラスミンタンパク質が検出された。従って,卵巣において作動しているプラスミノゲンアクチベータ/プラスミン系は,ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータとプラスミンの組み合わせであることが明らかになった。 2.排卵後の組織修復(特に組織の消滅)過程では,細胞外マトリックス成分の迅速な分解が伴うことから,濾胞組織に存在するコラーゲン(タイブIとタイプIV)の分布を明らかにするとともに,組織修復過程における変化を調べだ。特異的抗体を作製して免疫組織化学的解析により調査したところ,タイプIコラーゲンの消失のタイミングは,濾胞組織の消滅の過程と一致した。タイプIVコラーゲンについては,作製した抗体の性能が悪く,解析に堪えないことが判明した。 3.メダカ卵巣にエンテロペプチダーゼ遺伝子のmRNAが高発現していることが明らかになった。しかし,タンパク質には翻訳されていなかった。
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