2005 Fiscal Year Annual Research Report
エクスカベート類の微細構造・分子形質比較解析による初期真核生物像の探究
Project/Area Number |
17370029
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井上 勲 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (70168433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 哲男 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (50208451)
中山 剛 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (40302369)
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Keywords | エクスカベート / 系統分類 / 微細構造 / 分子系統 |
Research Abstract |
海洋および淡水域からさまざまな鞭毛虫および微細藻類を採集し、多数の培養株を確立した。特に貧酸素環境下(底泥など)からは未記載種を含めていくつかのエクスカベート類の培養株を確立することに成功した。これらエクスカベート類のうちいくつかについては、光学顕微鏡、電子顕微鏡および18S rDNA塩基配列に基づく系統解析を行った。この中で、鹿児島県から採集された新属新種エクスカベート、Dysnectes brevis(記載予定)は、微細構造および分子形質から、真核生物における大系統群の一つであるフォルニカータ(ディプロモナス類+レトルタモナス類+Carpediemonas)の初期分岐生物であることが示された。また分子系統解析からは、Dysnectesの進化速度がフォルニカータ類の中では異例に遅いことが示唆された。これらの結果は、ヒト寄生虫(Giardiaなど)を含む重要な生物群であるフォルニカータ類の進化、真核生物におけるフォルニカータの系統的位置、および真核生物の初期進化を考える上で重要な極めて興味深い知見である。また褐藻などを含むストラメノパイルの中で、無色鞭毛虫であるビコソエカ類に属するBicosoeca sp.およびCafeteria dimorpha sp.nov.(記載予定)の微細構造を調査した。その結果、鞭毛装置を中心としてエクスカベート類との間に多くの類似性が見られた。このことは、エクスカベート類の特徴とされている多くの微細構造学的形質は、エクスカベート類の固有派生形質ではなく、多くの真核生物に共通する共有原始形質であることを示唆している。またこのことは、エクスカベート類の単系統性が分子形質からは支持されない結果と整合的である。
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