2007 Fiscal Year Annual Research Report
エクスカベート類の微細構造・分子形質比較解析による初期真核生物像の研究
Project/Area Number |
17370029
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井上 勲 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (70168433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 哲男 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (50208451)
中山 剛 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (40302369)
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Keywords | エクスカベート / 系統分類 / 微細構造 / 分子系統 |
Research Abstract |
海洋および淡水域からさまざまな鞭毛虫および微細藻類を採集し、多数の培養株を確立、いくつかについては微細構造観察および分子系統解析を行った。微細構造観察および分子系統解析をもとに新規エクスカベートである新属新種Dysnectes brevisを記載した(Yubuki et al. 2007)。さまざまな遺伝子を用いた分子系統解析の結果から、本生物はディプロモナス類やレトルタモナス類を含む真核生物の一群であるフォルニカータにおける初期分岐生物であることが示された。特に自由生活性でありながら典型的なミトコンドリアを欠き、遺伝子の進化速度が平均的であったことから、本生物はフォルニカータ生物群の進化を考える際に極めて重要な存在であると考えられる。またエクスカベート以外の生物群としては緑色植物であるNephroselmis、ストラメノパイルであるSpumellaおよびAurearenaについて微細構造および分子形質を調査した。特に和歌山県磯ノ浦海岸などから発見されたAurearenaは綱レベルで新規の不等毛藻類であることが判明し、新綱の新属新種として記載した(Kai et al. 2008)。これら生物を含め真核生物全体の分子系統解析を行ったところ、エクスカベート類の単系統性について明瞭な支持は得られなかった。微細構造形質、特に鞭毛装置に見られるエクスカベートと他の真核生物との共通性から考えると、エクスカベートの共通点と考えられている形質は真核生物の大部分(もしくは全体)の共有原始形質ではないかと思われる。つまりエクスカベートの細胞形態は真核生物の原始形を色濃く残しているものと考えられる。
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