2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17370032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
邑田 仁 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (90134452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東馬 哲雄 (大井 哲雄) 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (10376527)
河原 孝行 森林総合研究所, 北海道支所, 研究グループ長 (70353654)
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Keywords | 植物 / 進化 / 分類学 / 植物相 / 種分化 / 系統地理 / 倍数化 / 染色体 |
Research Abstract |
本研究はテンナンショウ属のマムシグサ節全体の系統解析により日本産のヒロハテンナンショウに近縁なグループを特定し、特定された「ヒロハテンナンショウ群」(ヒロハ群)について詳細な分子系統地理学的な解析を行い、このグループの種分化と、過去の分布変遷について明らかにすることを目的としている。前年度まででヒロハ群の位置づけについて確定することができたので、今年度は群内の多様性と構造を集中的に検討した。 ヒロハ群の分布域から網羅的にサンプリングを行い、38集団約350個体を採集して材料とした。代表個体数個体の染色体を直接観察し、染色体数を算定したうえで、残りの個体については算定個体を基準としてフローサイトメーター(FCM)により倍数レベルの調査を行った。分子遺伝学的解析では約350個体全てについて葉緑体DNAの3領域(trnL-trnF, psbB-psbH, rpl20-rps12)の塩基配列を決定して、変異を調べた。また倍数体の起原をさぐるため、その中から代表サンプルを選び出し、複数の核DNAマーカー(Phytochrome A/B/C遺伝子,Aggle Lectin遺伝子,FLO/LFY遺伝子)を用いたスクリーニングも行った。その結果以下の点を明らかにすることができた。 1.ヒロハ群には染色体数にx=13を基本とする倍数性があることを確認した。従来知られていた2、4、5倍体のほかに、6倍体があることを明らかにした。2倍体は東海地方ばかりでなく、岩手県にも分布していた。また、5倍体は北海道ばかりでなく青森県にも分布し、6倍体は北海道東南部に分布することが明らかとなった。 2.葉緑体DNAの多型解析により、ヒロハ群では6種類のハプロタイプ(Type A-F)が区別された。TypeAがすべての倍数体に分布しているほか、4倍体には地域的にTypeB、C、EとFがあった。また、TypeDは2倍体であるイナヒロハテンナンショウに固有であった。 3.本研究の目的としては、single copyの核遺伝子を解析に用いることが重要であるが、現在までのところPhytochrome B遺伝子が最も有望であるとみられる。
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