2007 Fiscal Year Annual Research Report
ラジカルの高い反応性を利用する酵素とその活性化蛋白質の構造生物化学
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17370038
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
虎谷 哲夫 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (70026318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛松 孝正 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (30188768)
森 光一 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (50379715)
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Keywords | ラジカル酵素 / B12補酵素 / ジオールデヒドラターゼ / グリセロールデヒドラターゼ / 再活性化因子 / 特異性 / 計算化学的変異 / 理論化学 |
Research Abstract |
(1)AdoCb1関与ジオールデヒドラターゼ(DD)のHis143残基の機能解析 本酵素のHis143残基は活性部位に存在し、基質の2位水酸基と水素結合して存在する。この残基を他のアミノ酸残基に置換して、変異型酵素の触媒機能を調べた結果、His143は触媒機能に必須であるばかりでなく、ラジカル中間体の副反応防止にも重要であることが分かった。基質の2位水酸基がHis143と水素結合することで、C2からC1への水酸基転移における遷移状態が安定化されることが、重水素同位体効果の測定により初めて実験的に示された。 (2)AdoCb1関与酵素の再活性化因子の特異性の分子的基礎の解明 DDと類似酵素のグリセロールデヒドラターゼ(GD)およびDD再活性化因子(DDR)とGD再活性化因子(GDR)の精製蛋白質を用いて調べたところ、DDRはGDを再活性化できるが、GDRはDDを再活性化できないという再活性化因子の特異性は、酵素との複合体形成能によって決定されていることが強く示唆された。これは立体構造に基づく両者の接触面積の計算結果からも支持された。よって、再活性化には安定な酵素-再活性化因子複合体の形成が不可欠であると結論できた。 (3)AdoCbl関与ジオールデヒドラターゼの計算化学的変異によるアミノ酸残基の機能解析。 理論化学計算の特長を生かして、計算化学的変異という新しい試みにより、活性部位アミノ酸残基の機能解析と変異型酵素の活性予測を非経験的に行った。その結果、密度汎関数法による理論計算からの予測値と遺伝子工学実験による実測値とがかなりよく一致したことより、本解析法が将来的には判定量的に行える可能性が示された。これらの事実を踏まえて、酵素科学と理論化学の連携により酵素研究に新しいパラダイムが生まれることを提唱した。
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