2008 Fiscal Year Annual Research Report
ラジカルの高い反応性を利用する酵素とその活性化蛋白質の構造生物化学
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17370038
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
虎谷 哲夫 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (70026318)
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Keywords | ラジカル酵素 / B12補酵素 / ジオールデヒドラターゼ / グリセロールデヒドラターゼ / 再活性化因子 / 分子シャペロン / 超分子複合体 / 立体構造 |
Research Abstract |
(1)B12補酵素関与ジオールデヒドラターゼの基質アナログによる機構依存的不活性化 ジオールデヒドラターゼが3-不飽和-1,2-ジオールやチオグリセロールにより機構依存的に不活性化されることを見出した。前者の場合は、生成物ラジカルが5'-デオキシアデノシンから水素原子を引き抜き返せないため、後者の場合は、生成物ラジカルから脱離反応が起こるため不活性化されることが示唆された。 (2)Bl2補酵素結合部位におけるアデニンアンカーとイオン対の役割 ジオールデヒドラターゼ(DD)-アデニニルペンチルB12複合体の立体構造から、B12補酵素は活性部位においてアデニンN3とSer224の水酸基が水素結合し、リン酸基がLysl35のプロトン化したアミノ基とイオン対を形成して結合していることが示された。DDのこれらの残基を他のアミノ酸残基に置換して、変異型酵素の触媒機能を調べた結果、Ser224はCo-C結合の開裂と不活性化の防止に、Lys135の正電荷は補酵素の結合に重要であることが明らかになった。 (3)Bl2補酵素関与グリセロールデヒドラターゼの低溶解性化 ジオールデヒドラターゼ(DD)とグリセロールデヒドラターゼ(GD)は等機能で立体構造も類似しているが、前者は溶解度が低く、後者は高い。DDのβサブユニットにのみ存在するN末端領域約34残基と低ホモロジー領域合わせて60残基、およびDDのγサブユニットにのみ存在するN末端領域約33残基とをGDのβおよびγサブユニットのN末端に融合すると、低溶解性のGDが得られた。蛋白質の低溶解性化の一般的な戦略として使える可能性がある。 (4)活性部位金属イオンの妥当性の計算化学的再評価 ジオールデヒドラターゼ(DD)の結晶構造解析によれば、活性部位では基質の水酸基がカリウムイオンに配位しているとされている。QM/MM法による理論計算で最適化された金属-リガンド距離の値が、むしろカルシウムーリガンド距離に近いことから、基質が配位している金属イオンはカルシウムであることが示唆された。
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