2006 Fiscal Year Annual Research Report
DNA損傷による複製フォーク進行阻害とその回復過程の分子機構
Project/Area Number |
17370063
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
真木 寿治 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (20199649)
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / DNA複製 / 突然変異 |
Research Abstract |
昨年度の研究の過程で発見したDinBタンパク質によるDNAポリメラーゼIIIホロ酵素(Pol III)のDNA鎖伸長反応の阻害について、in vivoおよびin vitroでの詳細な解析を行った。まず、Pol IIIに対するDinBの阻害効果は、DinBの濃度に依存して様々な様式を示すことを明らかにした。高濃度のDinBの効果としては、Pol IIIとDNAが形成する開始複合体およびDNA鋳伸長反応を行っているPol IIIに作用してDinBがPol IIIからプライマーDNAを奪うことができる。さらに低い濃度では、DNA鋳伸長反応を行っているPol IIIの伸張速度を低下したり、鋳型上の特定の領域でPol IIIの伸長反応を停止させる。さらに、このDNA鎖伸長反応の阻害の分子機構を解明する過程で、DNA上でβクランプと安定に結合しているPol IIIがDinBの働きによりDNAから解離することが見いだされた。クランプと複製酵素の結合を解離させる酵素活性はこれまで報告はなく、全く新規の酵素活性である。おそらく、この活性がDNA鎖上の損傷部位などで停止してしまったPol IIIを損傷部位から離脱させて他の損傷乗り越え型DNAポリメラーゼなどの介入を容易にするものと予想される。また、複製酵素をDNA複製フォークから取り除くことにより、DNA複製を一時的に停止させることに役立っているのかも知れない。このことを大腸菌細胞で検証するために、DinBの発現を制御できる菌株を作成し、DinB過剰発現のDNA複製に対する影響を調べた。その結果、DinBの過剰発現の直後から細胞のDNA複製が完全に抑制され、DinBが単に損傷乗り越え型DNAポリメラーゼとして働くのではなく、DNA複製の制御因子として働く可能性が示唆された。
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