Research Abstract |
培地の水条件への応答に関しては,イネ,コムギ,および比較検討のために双子葉植物のケナフを用いて検討した.いずれにおいても,乾燥・湛水により,地上部/地下部の比や,最長根長などに変化が見られたが,湛水に置いては,単に嫌気的である条件よりも,硫化水素を培地に加えた際に,生育の阻害が顕著であった.根の内部組織を見ると,湛水による通気組織の発達は,コムギはケナフに比べ劣っていた.外皮のカスパリー線形成を見ると,イネで顕著であった.ケナフも外皮にカスパリー線を形成するが,湛水ストレス条件下では,形成が遅れ,根の先端から最初にカスパリー線が確認できる部位までの距離が長くなった.コムギでは,外皮にはカスパリー線が確認できなかった.塩分ストレスへの応答については,イネを対象に,培地中の塩分が種子根のカスパリー線の発達や形態に与える影響を調べた.種子根のカスパリー線の先端部位を特定し、カスパリー線の先端から根の先端までの距離をみると,内皮・外皮カスパリー線いずれの場合でも、200mM NaCl存在下でその距離は有意に短く,特に外皮の場合はその程度が顕著であったが,その詳細については引き続き検討中である。なお,これら根の組織の特に細胞壁に関わる形態観察および壁組成の推定については,従来の蛍光顕微鏡による観察に加えて,研究協力者のA.Lux教授に協力を得て,数種の蛍光プローブを用い,共焦点レーザー顕微鏡で,より鮮明な画像の撮影や立体構造の観察が可能となった.
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