2007 Fiscal Year Annual Research Report
イネ科作物における根の内皮・外皮細胞壁の形態・組成の環境応答と機能的意義
Project/Area Number |
17380010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 淳 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (60221727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
唐原 一郎 富山大学, 理学部, 准教授 (60283058)
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Keywords | 植物 / 細胞・組織 / ストレス |
Research Abstract |
土壌で生育する作物の場合,畑状態と湛水,過湿状態とでは,単に水分量や酸素量といった違いだけでなく,土壌中の化学組成が嫌気的な状態に変化することも,ストレスを引き起こすと考えられている。その1例として窒素に着目し,畑土壌に多い硝酸態窒素と,湛水,過湿土壌に多いアンモニア態窒素が内皮の細胞壁に与える影響を水耕栽培で検討した。その結果,トウモロコシなどで,適量の窒素栄養を,硝酸態窒素で与えた場合に較べて,アンモニア態窒素で与えた場合のほうが,根の内皮細胞壁の肥厚とリグニン化が顕著であった。このことは,土壌中に有害物質が発生しやすい湛水,過湿条件への適応的な反応とも考えられる。しかし,培地のアンモニア態窒素の濃度が著しく高い場合には,逆に根の細胞壁のリグニン化が阻害されるケースが見られた。一方,乾燥ストレスや塩分ストレスについては,これらのストレスの際に発生する浸透圧ストレスに着目し,根の組織の細胞壁に及ぼす影響を検討した。そのために,マンニトールを含む寒天培地と含まない寒天培地を重ねた境界部にイネの根を伸長させることで,1本の根の片側は正常で,片側には浸透圧ストレスがかかった状態で,カスパリー線の形成などがどのように異なるかを検討できた。その結果浸透圧ストレスのかかった側は,内皮のカスパリー線が,より根の先端に近い位置から形成されていた。これらは,同一の根で,根端からの細胞形成の速さは同じであることから,浸透圧ストレスが根の伸長を介した間接的な影響だけでなく,実質的にもカスパリ線形成を早めることが示唆された。
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