2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17380035
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
桜井 勝 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (80143874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩見 雅史 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (40193768)
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Keywords | エクジソン / 膜受容体 / カイコガ / 変態 / 予定細胞死 / シグナル伝達 / カスパーゼ / カルシウム |
Research Abstract |
完全変態昆虫の蛹変態期では、幼虫期にのみ機能している組織は、蛹化を堺として、予定細胞死(PCD)により崩壊・除去される。このPCDは昆虫のステロイドホルモンである20-ヒドロキシエクジソン(20E) に完全に依存している。カイコガ幼虫のもっとも大きな組織は、絹タンパク質を産生しそこから絹糸を紡ぐ絹糸腺であり、これも繭を作り終えると、昆虫には不必要となり、蛹化後に完全に消失する。この絹糸腺の内、本研究では単一細胞種からなる前部絹糸腺を用いて、死のコミットメント、20Eによる初期遺伝子発現動態、effector遺伝子としてのアネキシンIX、20E以後カスパーゼ様タンパク質の活性化までのシグナル伝達経路についての解明を目指した。 前部絹糸腺の死のコミットメントは、5令4-5日で起き、その後20E応答性が見られるようになること。20E応答性の発現時期にはすでにJH応答能は失われていることが明らかとなった。また、初期遺伝子12種類について、in vivoでの発現を日ベースで解析後、ガットパージ後は時間単位で解析した。その結果、EcRB1,USP-1,FTZ-F1 は5令5日の20E応答開始時期のみに発現することから、死のコミットメントに関与するとの示唆を得た。その他の遺伝子の発現は、ガットパージ後に急上昇すること、特にEcRAとUSP-2のヘテロダイマーが死の20Eシグナルの伝達を担うこと、それにより発現する初期遺伝子はE75Aと考えられる結果を得た。in vitro解析の結果、これらの遺伝子発現は全て20E依存的に発現が調節されていた。また、その至適濃度は2極性を示すものもあり、低濃度と高濃度で発現はupregulateされ、中間濃度には応答しないものもあった。これらの応答特性を示す遺伝子はin vivoでもガットパージを挟んで2回発現ピークを示すことから、in vitroの結果はin vivoの知見をよく説明できた。effector geneとして、アネキシンIXの発現調節を精査し、細胞死進行の抑制因子として作用していることを示唆する結果を得たものの、直接証明には至っていない。20Eの膜受容体とその下流のシグナル伝達経路について解析した結果、細胞死の系ではカルシウムイオン-プロテインキナーゼC-カスパーゼ3様タンパク質-DNA断片化の系が作動していることが明らかとなった。
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