2008 Fiscal Year Annual Research Report
耕地土壌における脱窒のエコ・ゲノミックス-根粒菌共生系のN 2Oパラドックスの解明と土壌微生物集団ゲノム科学の基盤構築-
Project/Area Number |
17380046
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
南澤 究 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 教授 (70167667)
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Keywords | 根粒菌 / 脱窒 / 亜酸化窒素 / 硝酸 / nosZ / ダイズ / 老化 / 多型解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、農耕地土壌として特徴のある根粒根圏と水田土壌を対象として微生物による窒素変換過程(脱窒)を明らかにし、土壌窒素循環系のエコ・ゲノミクスの研究基盤を作ることにある。レオナルドジャー栽培接種系による根粒着生ダイズ根系からのN_2O発生に関与する生物と窒素変換過程を検討した。nosZ遺伝子を保有する野生型のダイズ根粒菌B.japonicum USDA110を対照として、nosZ遺伝子破壊株の、ダイズへの接種実験による比較実験を行った。具体的には、30日間栽培した接種ダイズを、無処理、老化処理(D)、土壌添加処理(S)、D+S処理を行い、処理後の根圏から放出されるN_2Oの測定を行った。その結果、接種したダイズ根粒菌のN_2O還元酵素遺伝子nosZが存在しないと、老化根粒からのN_2O発生が顕著に増えることが明らかとなった。さらに、ダイズ根粒菌の硝酸還元酵素napAとnosZの2重変異株を作成し同様の検討を行ったところ、当該2重変異株ではN_2O発生が減少する傾向が観察された。また、硝酸および亜硝酸添加により老化根粒からのN_2O発生が促進され、硝化抑制剤で顕著にN_2O発生が抑制された。したがって、老化根粒からのN_2O発生は、土壌中の硝化細菌の硝化過程を経て、根粒中のダイズ根粒菌が脱窒過程を担って発生していると結論された。また、N_2O発生を起こしている圃場栽培ダイズでは、土壌の細菌捕食性線虫が増殖していることが、DNA多型解析と顕微鏡観察から明らかとなり、根粒タンパクのアンモニアへの無機化に関与している可能性も考えられた。以上の結果より、根粒根圏からのN_2O発生の最終過程は、nosZ-型土着ダイズ根粒菌が担っていたので、日本全国のダイズ圃場を検討した。その結果、nosZ+型が優占土壌とnosZ-型が優占圃場の存在が明らかとなり、黒ボク土壌でnosZ-型が優占している傾向が観察された。
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Research Products
(5 results)